5000101 - 見知らぬ世界 ???: 見て。太陽が (そう声を上げたのは誰だったのだろう。) (みんなでただ、水平線に沈んでいく夕陽を眺めていたときだった。) ???: また、見られますよね。全員で (それは誰の声かは明らかだった。すぐ隣にすわっていたから。) (手を握ると、彼女は驚いた様子だったが、すぐに握り返してきた。) (もう誰も、失いたくない。) (そんな決意を込めて。強く、しっかりと、指を絡めて。) (出会ったときは、こんなにも存在が大きくなるなんて、予想もしていなかったのに――) (背景切換...) ???: ――さん。――……人間さん! (自分を呼ぶ声が聞こえる。この声は……誰だろう。) (背景切換...) ???: やっと目覚めましたか 主人公: ……? ここは、どこだ? それに、きみは (周囲は、何の変哲もない森だった。) (オトギノクニに来て以降、よく見かける風景だ。) 動物の骨を被った人: のんびり眠っている場合ではありません。まさか、オトギノクニに来てからのことを、忘れてしまったわけではないでしょう? (そう。少し前までは、現代日本で何の変哲もない生活を送っていた自分は、ひょんなことからこのオトギノクニという異世界に迷い込んでしまった。) (そこは幼い頃から見聞きしたおとぎ話をほうふつとさせる世界であり、そして人物たちだった。) 動物の骨を被った人: ふん……どうやら、思っていた以上に強いエルマイトを持っていますね。それが良い結果につながるかどうかは別として (オトギノクニを形成するエネルギーは2種類あるらしい。) (エルマイトとディマイトだ。) (2つの均衡が取れている状態がベストなのだが、ディマイトが一方的に強くなり、不安定になってしまった世界を救う――) (それが大量にエルマイトを持つ自分に、求められた役割だった。) 動物の骨を被った人: 残された時間は多くありません。手短に話させてもらいます 動物の骨を被った人: まずひとつ。ここはあなたがこれまで過ごしていた時間よりも、過去にあたります 動物の骨を被った人: ふたつ。あなたにはこれから、重要な役目を与えます 動物の骨を被った人: みっつ。それが達成できなければ、あなたは仲間のところには戻れません 主人公: 過去……!? いや、待って。それって 動物の骨を被った人: 細かい具体的な話は山積みですが、まずその3つを頭に叩き込んでおいてください 主人公: きみが呼び出したってこと!? 待ってくれ、自分には重要な役目があるんだ。元に戻してもらわないと仲間が大変なことになるかも (オトギノクニに迷い込んで以降、自分を頼りにしてくれた仲間たち。) (苦楽を共に分かち合ってきた彼女たちを見捨てることなどできない。) 動物の骨を被った人: 叩き込んでほしいと言ったはずです 主人公: ……!? (目の前の彼女の鋭い声に、思わず口ごもってしまう。) (その迫力からは、何か差し迫った事情がうかがえる。) 動物の骨を被った人: 3つ目をもう忘れてしまったようですね。そして最初に言ったはずです。時間はあまり多くない、無駄な時間を浪費しないでいただきたい 主人公: 勝手に呼び出しておいて、そんな態度はないだろう! 主人公: ……とは一応言ってみたものの、本当に過去だっていうなら打つ手はない。少なくとも情報が集まるまでは従うしかないか…… 動物の骨を被った人: 動揺するのも無理もありませんが、冷静になってください。どれだけ騒いでも事態は変わりません 主人公: じゃあ教えてくれ。目的ってなんだ 動物の骨を被った人: これを (彼女が差し出したのは似顔絵だった。) (かなり高い画力で、容易に顔を思い浮かべることができる。) 動物の骨を被った人: あなたの目的は、彼女たちの信頼を勝ち取ることです 主人公: 信頼を……? 動物の骨を被った人: さあ、立って。彼女たちのところへ案内しましょう。魔を統べる王のもとへ、ね 5000102 - この世の害悪 (これまでも何度も歩いたことのある風景だった。) (オトギノクニの主要な街道は、どこもこんな感じだ。) 主人公: ……そう言えば、きみの名前は? 動物の骨を被った人: 追加の条件を伝えておきます (会話になっていない。) (こちらの話は聞くつもりもない、ということか。) 動物の骨を被った人: さっきも言いましたが、あなたはいま、過去にいます。つまり、時系列が異なるだけで、まったくの別世界というわけではありません 動物の骨を被った人: つまり、あなたのことを知っている人物も存在しています。むろん、あなたと出会う前の状態ではありますが 主人公: ……なんとなく予想できたぞ (いわゆるタイムパラドックスというやつだ。) (もしも本当に彼女の言うとおり過去にいるなら、その手のフィクションでは鉄板の禁忌。) 動物の骨を被った人: あなたを知っている人に会ってはいけません。その時点で、あなたは役割を全うできるかどうかに関わらず、元には戻れなくなります 主人公: 分かった。じゃあ、ここがどこなのか教えてほしい。じゃないと、うっかり会う可能性があるかどうかも分からない 動物の骨を被った人: ……ここは、ギガン・カーズ・アイランド。通称、カーズ島です。大きな島で、ここはその南東部に位置するネッサ森林地帯 主人公: なるほど (まったく聞き覚えのない地名だ。) (少なくとも今すぐ、誰かに遭遇することはないだろう。) 動物の骨を被った人: あなたが信頼を得なくてはいけない4名は、この森を抜けてすぐの町にいます 主人公: 信頼を勝ち取るって、簡単にできることじゃないと思うんだけどな 動物の骨を被った人: 女の子と仲良くなるのはお得意でしょう? (挑発するように嘲笑う、謎の女性。) (だが問題は、挑発を受けたことなんかじゃない。) 主人公: 自分の、オトギノクニに来てからの状況を知っている……? (エルマイトの影響なのか、オトギノクニに来てから女の子と親しくする頻度が急に上がったのは事実だ。) 主人公: どこまで情報を持っているんだろう。そもそも…… 主人公: そもそも、なんで信頼を勝ち取らなきゃいけないんだ? まさか、きみが彼女たちの敵で、密偵でもやれってこと? 動物の骨を被った人: それはあなたには関係のないことです 主人公: 大アリだ。裏切るために、信頼してもらう努力をするなんてごめんだからな 動物の骨を被った人: あなたが戻れるかどうかの瀬戸際の話ですよ。そんな自己満足のような正義感に振り回されていていいのですか 主人公: ……自分が得するために、人の心を踏みにじったりできないだろ (正義感というほど高尚なものじゃない。これは自己防衛だ。) 主人公: 状況を想像するだけで胸が痛いのに、裏切ったときに普通にしてられる自信がない。たぶん普通に精神を病みそうな気がする ???: ええやん、ええやん。自分、なかなかおもろいやんけ (ふいに聞こえた声に視線を向けると、街道脇の木陰から姿を見せる人影。) (目の前の相手と同様に、頭蓋骨のようなものを付けており表情は見えない。) 人骨を被った人: どう見ても、兄ちゃんのほうが圧倒的に不利やん。そんなん、兄ちゃんかて分かっとるんやろ? せやけど黙っとられんっちゅうことやな 人骨を被った人: 譲れない一線て、誰にでもあるわな。ええんちゃう、こんくらい気合入っとらんと、務まらんし 動物の骨を被った人: それは……まあ、そうね。言いなりの操り人形では、心もとないのは事実だわ 主人公: 話が見えないんだけど。えーと、そちらは…… 人骨を被った人: せやから、ウチは兄ちゃんのこと、なかなか気に入ったっちゅう話やがな 主人公: そんな話だったか……? 人骨を被った人: ま、こっちも指示出しするんやさかい、ちょっとは情報出しとかんと兄ちゃんもワケわからんやろ 動物の骨を被った人: まあ、それはそうですが 人骨を被った人: なんのために信頼を得るんか、やったな。それはな、あの子らの運命を変えてほしいて思っとるからや 主人公: 運命……? 人骨を被った人: ん、ちょうどええな。上、見てみ (促されて空を見上げる。) (そこには見たこともない何かが宙に浮いていた。) 動物の骨を被った人: まだ今は、詳しいことは言えません。ただ、あなたにしてもらうことは、その4人にとって有利なことなのは、間違いありません。信頼の獲得に躊躇する必要はありませんよ 人骨を被った人: その子らの運命にな、あいつらがいらんことしよるんよ 主人公: あれは……? 動物の骨を被った人: 『獣聖騎兵』――世界の理を覆す、害悪の塊です 5000103 - オトギノクニを統べるもの (――インペリウム・コミッティ 本部――) ヴィルヘルミナ: 姉さん、報告が上がってきてるわ (第2号委員 副議長 ヴィルヘルミナ・グリム) ジャコヴァ: 簡潔に。あと、分かりやすく (第1号委員 議長 ジャコヴァ・グリム) ヴィルヘルミナ: ディープフォレスト自治区の沿岸部で獣聖騎兵の襲撃を確認。被害状況はこれから具体的に報告されると思うけど、決して小さくないわ ジャコヴァ: ……まさに神出鬼没だな。遠く離れた名無しの森の襲撃は、まだ先週の話だというのに ヴィルヘルミナ: ええ、本当に。もちろん同じ個体ではないんでしょうけど ジャコヴァ: 敵は本気だな。本気でこの世界を変えるつもりだ ヴィルヘルミナ: オトギノクニを長らく支配してきた、この名門グリム家に刃向かうなんてね……身の程を知らないとはこのことね ペロー: まったくです (第13号委員 ペロー) ヴィルヘルミナ: ペロー……何か用かしら ペロー: いやぁ、大変ですねぇ。さすがは名門グリム家。敵が多い。そもそもが我々もグリム家のお目付け役のようなものですし ジャコヴァ: ほう? ペロー: グリム家の台頭を危惧し、アイソーポス副議長が交渉の末に設立したオトギノクニ最高意思決定機関『インペリウム・コミッティ』―― ペロー: グリム家6名と、我々『作家』の資格を有する者7名で構成されている。その議席数が端的に示しているではありませんか。つまり、グリムの意思だけで世界を動かすことは許さない、と ジャコヴァ: おまえごときに私をコントロールできるとでも? ペロー: 私の意見ではありませんよ。誤解なきよう。これはあくまでも、アイソーポス副議長の設立理念ですから ヴィルヘルミナ: ……それは知っているわ。で、あなたは何をしているの ペロー: 何って、緊急招集があったから出頭したまでですよ。では、お先に ペロー: ああ、そうそう。取るに足らないことではありますが……私の部下が入手した情報によりますと、一連のミッションコードは『神罰』――だそうですよ ジャコヴァ: ちっ……思い上がるのも今のうちだ ヴィルヘルミナ: ええ。天空神殿も、ペローもね (背景切換...) (――インペリウム・コミッティ 議場――) 紫式部: では本日の緊急議案について進めます (第11号委員 紫式部) 紫式部: 『獣聖騎兵』の被害状況と作戦行動について。報告をお願いします、ヴィルヘルミナ委員 ヴィルヘルミナ: 皆さんも知っての通り、我々コミッティに反旗を翻し、各地で破壊活動を行っていたレジスタンス『星の革命軍』は現在、『天空神殿』を名乗り、まさに神をも恐れぬ所業を繰り返しているわ パラケルスス: 強気な態度は、やっぱりエネルギーを握った事実があるからだろうね (第8号委員 パラケルスス) ヴィルヘルミナ: 『星の革命軍』あらため『天空神殿』の事実上のリーダーだったライブラは、その秘術によりオトギノクニのエネルギー資源を完全に掌握…… カロラ: そういうことだな。どういう理屈なのか、あたしにはさっぱりだけど……要は、今までなんとなく人間界からあたしらに流れてきてたエネルギーが、全部止まっちまったんだろ (第3号委員 カロラ・グリム) ペロー: 兵糧攻め、というやつですね。このままでは我々は干上がってしまう シャルロッテ: エネルギーには2種類ある、というお話でしたわね (第6号委員 シャルロッテ・グリム) パラケルスス: そのとおり。人間界から供給されるエネルギー『イマジュマイト』には、実はエルマイトとディマイトの2種類が存在している パラケルスス: 天空神殿はそのどちらも供給を止めた。世界のすべてを人質にとったようなものだね ヴィルヘルミナ: 先ほど入った情報によれば、ディープフォレスト自治区にまた襲撃があったそうよ カロラ: ったく、あちこちでバカスカ攻撃しやがって、何がしてーんだよ ヴィルヘルミナ: それについては、ひとつ仮説が浮上しているわ シャルロッテ: 動きがあったんですのね? ヴィルヘルミナ: それが今日の報告内容よ。被害が特に激しい地域について共通点を調査したところ、興味深い事実が見つかったの ヴィルヘルミナ: いずれもディマイトがとても高い地域だったのよ。もしかすると、天空神殿はディマイトを狙い撃ちにしているのかもしれないわ カロラ: なんのために、そんなことすんだよ パラケルスス: それはこれから調査するほかないね。まあ、まずは取っ掛かりは見つかったわけだ…… (背景切換...) 動物の骨を被った人: 見つかってしまいましたか……。仕方ありません、一戦交えるとしましょう 主人公: すぐ上に、あんな化け物が……? あれは、魔物か? 魔物ならこれまでも仲間と戦ってきたけど 人骨を被った人: 兄ちゃんはちょっとそこらへんに隠れとき……って、ちょ、兄ちゃん、何してんのや 主人公: 装備してた剣ごと過去に来たみたいだからな。俺もこいつで、戦う! 5000104 - 求める理想 主人公: これまでは、いくら鍛えても俺は魔物に太刀打ちできなかった。でも、今なら―― 動物の骨を被った人: なっ、無茶です! なにを言ってるんですか 人骨を被った人: いや……その構え、素人ちゃうな。もしかしたら、いけるんかも…… 主人公: せやあああああっ!! 主人公: ぐぁああああっ!? (見事にふっとばされ、したたかに背中を地面に打ち付ける。) 人骨を被った人: や、あかんかったな…… 主人公: なんか世界の雰囲気も違うし、もしかしたらと思ったのに……やっぱり戦えないままなのか…… 動物の骨を被った人: いいから、ここは私たちに任せてください。大丈夫、相手はたかが一体です、負けはしません 主人公: くっそ……! 戦えると思ったのに…… 動物の骨を被った人: ……そんなに戦いたかったんですか? 私たちが対抗できると言ってるのに 主人公: 守られてばかりの自分を終わりにできると思ったんだよ。なのに……いや、グチグチ言っても始まらないんだけどな 動物の骨を被った人: ……あなたは、初めて見る未知の敵に遭遇しているというのに。勇敢……というか、無謀というか 人骨を被った人: おい、ヴィネ。しっかりしろ。兄ちゃんのことより、目の前の敵やで ヴィネ?: ええ、分かっています ヴィネ?: ……獣聖騎兵には、誰しもが対抗できるわけではありません。選ばれし者だけの力なのです。戦えないからと悲観しないでください 人骨を被った人: ……っと、あかんわ。この気配、ヴィネも分かるやろ。時間切れや ヴィネ?: ……っ!? 予定よりもずっと早いですが、仕方ありませんね……。あなた、条件をもうひとつ追加します。私たちに会ったこと自体を、4人に話すことを禁じます 主人公: え? 4人って、その信頼を勝ち取る相手のことか? いや、それよりどこに行くつもりなんだ? まさか 人骨を被った人: 大丈夫やで。すぐ助けが来るさかいな。ほな、また! (ふたりはあろうことか、街道脇の森に姿を消してしまう。) (ひとり残された自分の前に、『獣聖騎兵』と呼ばれる相手が立ちはだかって……。) 主人公: 嘘だろ、やられる……っ!? ???: 伏せて! (ふいに飛び込んできた女性が、獣聖騎兵を牽制する。) (その横顔に、ハッとした。) 主人公: 似顔絵の………! 確か、名前は……バエル……! (背景切換...) ライブラ: 私は、誰も悲しまなくていい世界を作りたいの レグルス: 誰も、悲しまない? ライブラ: ええ、そうよ。もう二度と、失われる物語がないように……人間界に左右される不安定な世界は終わりにするべきだと思うの ライブラ: 悲しみはエネルギーの源だって言われてるのは、レグルスも知ってるでしょう? だからこの世界は悲しみに対して、許容しすぎている レグルス: そう、なんですか……? ライブラ: 他にもエネルギーを得る手段があったとしたら……きっと、誰も悲しまなくていいはずなのよ レグルス: ……やっぱりライブラは素敵な人。その高い理想は、私なんかじゃ理解しきれないけれど、でも…… レグルス: 支えてあげたい……すぐそばで、この人のために…… (背景切換...) レグルス: ……また、あのときのことを思い出して、私…… (天空神殿・神官長 レグルス) レグルス: あなたの遺志だから……。私なりに、世界をあなたが望んだ形にしたくて、それで一生懸命、考えてがんばってるけど…… レグルス: あなたのいない世界に、なんの価値があるっていうの…… デュプリ・ライブラ: 神官長―っ! (天空神殿・精霊管理監 デュプリ・ライブラ) レグルス: デュプリ・ライブラ……。あの人のいない世界に少しでも救いがほしくて、あなたの分身を生み出してみたけど…… デュプリ・ライブラ: おはよッス、今日の報告にきたんスけど…… レグルス: やっぱり私程度じゃ、あなたほどの人を上手に再現なんてできっこなかった デュプリ・ライブラ: って、あれ? なんか、泣いて…… レグルス: 見間違いでしょう。それより早く、本題に入りなさい デュプリ・ライブラ: あっ、はい。えーと、いつものディマイト侵蝕率の数値報告からッスね レグルス: 何か動きはあった? デュプリ・ライブラ: えと、ディープフォレスト方面の侵蝕率が、前日比1%減ッスね レグルス: たかが1%なんて、ごくわずかな影響しかないなら報告するまでもないわ。それよりも、他に優先すべきことはたくさんあるんだから デュプリ・ライブラ: そッスね。『獣聖騎兵』に任せておけば勝手に進んでくし。でもあれ、どういう仕組みで侵蝕率が減るんスか? レグルス: そんなこと…… デュプリ・ライブラ: あ、すんません。そんなこと、どうでもいいッスよね レグルス: そんなこと……私だって知りませんよ………。私はただ、ライブラの遺産を、残されたメモから読み解いて勝手に使っているだけなんだから…… レグルス: ええ、どうでもいいことです。そんなことよりも、私たちにはまだ重大な仕事が残されているでしょう デュプリ・ライブラ: あ、はい。『花』のことッスよね。用意はできてるッス! 5000105 - 終わりの始まり バエル: 大丈夫? 怪我はしてないわね? 主人公: あ、うん…… 主人公: 間違いない。彼女は似顔絵に描かれていた人だ。名前は、バエル バエル: ふう……私だから獣聖騎兵も倒せたけど、そうじゃなかったらあなた、大変なことになってたわよ。ひとりで何やってたの バエル: まさか戦おうとしてたんじゃないでしょうね 主人公: あ、いやこの剣は……持ってるものが、これくらいしかなくて 主人公: 信頼を得なくちゃいけないんだよな……。まず端的に信じてほしいってことを伝えて、それで悪いようにはしないってことと…… バエル: とにかく、ここは危ないわ。街に戻ったほうがいい。町が安全ってわけじゃないけど バエル: ちょっと、聞いてるの? 主人公: あっ……えっと、信じてほしいんだ! バエル: はあ? 主人公: 俺を、信じて欲しい。必ずきみを幸せにする。だから、そばにいさせてくれないか バエル: なっ……!? なっ、なに、それってプロポーズ……っ!? 主人公: え? あっ、い、いやっ、そうじゃなくて……! バエル: な、なんなのあなた……気持ち悪いわ…… 主人公: しまった! 完全に不審者じゃないか、これ! バエル: と、とにかく……あなたとはここでお別れね。死なないようにどこかに避難することをお勧めするわ 主人公: え、待ってくれ バエル: 私はあなたに何も話すことはないの! 目の前で見殺しにしたくはないから助けたけど、それ以上の意味なんてないのよ 主人公: やばい……! 信頼関係がゼロどころかマイナスになってる! でも、ここで置いていかれたら、後から探し出すなんて絶対無理だぞ 主人公: ここはなんとしても、一緒についていかないと……! 主人公: お願いします! 連れていってくれませんか! 俺、住むところもなくて、金もなくて、ついでに見ての通り力もなくて…… バエル: ちょ、ちょっと、やめてよ、土下座なんて! 主人公: こんなところに置いていかれたら、その時点で死亡確定なんです! バエル: ……っ。そんなこと言われたら、置いていきづらくなるじゃないの。卑怯だわ…… 主人公: 言ってることは嘘じゃないし……でも、なんか情けなくなってくるな…… 主人公: いや、これも無事に仲間のところに戻るためだ。プライドじゃ誰も救えないし、腹もふくれない バエル: ……あからさまに怪しいのよ、あなた 主人公: ですよね…… バエル: でもまあ、たしかに置いていくのは寝覚めが悪いわ。そうね、いいわ。ついてきなさい。ただし条件がある 主人公: 条件……? 主人公: また条件か…… バエル: 私は仲間と暮らしてるの。彼女たちも含め、身の回りの世話をすること。もちろん無償。住まわせ、食事させる代価だと思って バエル: それから、家の中での自由は与えないわ。好きに動き回れないし、外にも許可なく出さない。それでいいなら置いてあげる (条件を聞く限り、なんだか召使いか何かみたいだが……背に腹は代えられない。) 主人公: わかりました、それでいいです バエル: ふん、『契約成立』ね。私はバエル。魔族の序列1位、大いなる王よ (仲間もいないまま、世界にたったひとり。) (嘆いていても仕方がない。道は、切り開くしかないのだから。) (こうして、運命を変えるための日々が、ここに始まろうとしていたのだった――) 5000106 - 4人との生活 (突如、過去へと飛ばされてしまってから数日が経った。) (元の時代に戻るには、ある『条件』を提示されているのだが――) (背景切換...) バエル: ちょっと、ポチ! なにこれ!シワシワになったままじゃない!この私に恥をかかせるつもり!? ベレト: 玄関の汚れがひどいわね。ポチ、ちゃんと掃除してるの? あんな状態じゃお客様をお招きできないわ パイモン: ポチは優先順位を考えて行動しないからこうなる。最初から結果は見えていた アスモデウス: おーい、ポチ! アスモ様がお出かけだぞ。ついてこい! 主人公: ちょ、あの……ま、待ってください……。いっぺんに全部言われてもですね (元の時代に戻る条件。それは、この身勝手……もといマイペースな4人の、信頼を勝ち取ること。) (カーズ島で出会ったバエルに連れて行かれたのは、海を渡った先の、クラーネオ海域という領域の島だった。) バエル: 洗濯も満足にできないなんて、どういうこと? パイモン: そもそも、ポチは魔法も使えないし 主人公: バエルによれば、ここに4人で暮らしているらしい 主人公: なんとか奇跡的に、一緒に生活するところまでは実現できたけど……俺の立場は使用人という言葉がしっくりくる 主人公: というか、全員からポチ呼ばわりの時点でペットか……? アスモデウス: ポチ、ひとりで買い物できないだろ。アスモ様がついていってやる 主人公: ちなみにアスモデウスと名乗る彼女が俺をポチと名付けた パイモン: 同時に要求しているだけ。同時に実行しろなんて言ってない バエル: 今から出かけようと思ってたのに! すぐなんとかして ベレト: みっともないからすぐに掃除しなさいよ アスモデウス: ぐずぐずするなっ、早く! 主人公: 同時に実行しろって言われてると思うんですが…… バエル: 路頭に迷っていたあなたを拾ってあげたのは誰だと思ってるの? 恩を仇で返すつもり? 主人公: 今までは皆さんだけで、4人で暮らしてたんですよね……? どうやって成り立ってたんですか…… バエル: それはみんなで助け合ってたのよ パイモン: と言っても、この屋敷で同居するようになってから2ヶ月も経ってない ベレト: そうね……。エヴリンコーストが陥落した頃から、集まって住もうっていう話が出るようになって…… アスモデウス: いつまで待たせるんだ、ポチ! 早く来い! 散歩行くぞ! 主人公: あだだだだ!? 髪を引っ張るのはやめてくださいっ!? (背景切換...) (クラコーネオ海域というのが、どのあたりなのかは見当もつかない。) (ただ、この島の文明レベルはなかなか低いのは事実のようだ。) アスモデウス: なんだ、海の方なんてぼーっと見て。ポチはバカだな、あれは飲めない水なんだぞ。そんなことも知らないのか 主人公: 自由に外に出ることは許されないけど、こうして連れ出されることはある。でも町と呼べるものは付近にはなさそうだ バエル: 故郷に帰りたいとでも思ってるんじゃないの? 私に拾ってもらった恩も忘れて 主人公: いえ、そんな。ただ、きれいだなって思って見てただけで 主人公: 本音は仲間のところに戻りたいけど、そのためにも4人の信頼を得ないと バエル: ……そうだね。広い世界には、こんなにもたくさんきれいな場所があるのにね。それを知らずに消えていくことも、珍しくない アスモデウス: ……こんなこと、いつまで続くんだろうな バエル: 一方的に蹂躙されて、なんとか生き延びて、戦って、でも力が足りなくて…… 主人公: 例のあの、獣聖騎兵ですか バエル: ポチも見たでしょ。あれが今、オトギノクニの各地で暴れまわってる。もう既にたくさんの犠牲が出てる アスモデウス: それをなんとかするのが、アスモ様のすごいとこだぞ 主人公: えっ? なんとかって、皆さん、あれと戦ってるんですか? 遭遇したときに倒してるだけじゃなくて? バエル: 私たちは魔族の王という称号を手にするだけの実力を持ってるの。だから、たくさんの市民を守る義務がある アスモデウス: 出撃のときはポチは留守番だぞ 主人公: 信頼を得て、その後どうするのかと思っていたけど……その戦いが関係しているのかもな バエル: それよりポチ、今日の夕食の準備はできてるんでしょうね 主人公: はい。今日はポトフです 主人公: って言っても作り方よくわからないから、汁気の多い肉じゃがなんだけど (背景切換...) (その後、家事もろもろと格闘すること数時間。) (ようやく夕食の準備ができた。) 主人公: これだけの人の世話というか家事をこなすって重労働だよな。戻れたらヴェルにも改めて感謝しよう…… バエル: うん、今日の盛り付けもちゃんときれいにできているわね。やっぱり料理も見た目って大事だから ベレト: それにポチは、テーブルマナーもひととおり知ってるのよね 主人公: これはシンデレラのおかげだな…… アスモデウス: ポチ、お水 主人公: はい、ただいま (食事の時間といっても、こちらは給仕として控えているだけで、自分の食事は後で厨房で食べることになっている。) 主人公: 信頼を得るってどのレベルなんだろう……なんか、すごく遠い気がする…… 5000107 - 聖なる破壊の痕跡 パラケルスス: 見てよ、これ。ひどいもんだね (インペリウム・コミッティ 第8号委員 パラケルスス) レオナ: このへん、小さい集落ばっかりだからひとたまりもないだろうし (第9号委員 レオナ) パラケルスス: ここはディープフォレスト自治区の中でも、人口1,000人くらいの過疎の村だからね。そんな中で、貴重な働きざかりが10人も身体を失って、微精霊になってしまった パラケルスス: そう言えば昨日、ヴィルヘルミナに何か頼まれてたね レオナ: ええ。例の獣聖騎兵ってヤツの解析をしてくれって…… パラケルスス: 気乗りしない? レオナ: ううん、解析はいいのよ。でも、それが終われば次は…… パラケルスス: 対抗する兵器を作れ、になるか レオナ: そう パラケルスス: ぼくらは、アイソーポスにグリムの専横を許さないためにって集められたわけだけど、結局その目的に限って言えば、成功者はライブラだよね レオナ: そうね。わたしたちは任務に失敗した……というか、横取りされたようなものね パラケルスス: ある意味では当初の目的は果たしてるはずなのに……なんだろうね、この後味の悪さは。本当にこれがあるべき姿なのか、って聞かれてもぼくは…… レオナ: 天空神殿に正義があるとは、わたしも言えないわ。この有様を見たらね パラケルスス: 唐突に出現したかと思えば、一気呵成に始まる無差別攻撃……。攻撃の仕方が、本当に無差別なんだよね、あれらは……。なんていうか、感じられないんだよ レオナ: 良心が? パラケルスス: それはもちろんだけど、明確な目的意識も見いだせないと思わないか? レオナ: そうね……。こんな小さな村を攻撃する意味は分からないわ。ううん、ここをピンポイントで狙ったわけでもないのよね パラケルスス: ディープフォレスト自治区全体で言えば、もっと酷い状態みたいだね。ほら、海岸沿いが輝いている。美しい輝きだけど、意味するところを考えればおぞましいよ レオナ: 微精霊の群れ……ね レオナ: これほどの被害はエヴリンコースト防衛戦以来かもしれないわね パラケルスス: それで敵の行方は? 調べさせてるって聞いたけど レオナ: ええ。キャロルに協力してもらって、彼女の配下を動かしているわ。このエリアを捨てて、あっさり北部に向かったらしいけど パラケルスス: それで敵の目的がわかればいいけど、ね…… (背景切換...) アスモデウス: ポチ! アスモ様が大事にとっておいたおやつがなくなったぞ! 探せ! パイモン: 荷物、運んでおいてって言ったはず 主人公: はいはい、今やりますよ (更に数日が経った。) (さすがに4人の相手も慣れてくる。) 主人公: って言ってもキツいことには変わりないけど…… アスモデウス: そこらじゅう探すんだぞっ! いいなっ! 主人公: そこらじゅうって、こんな山小屋で場所なんて限られてるけど 主人公: って言っても、わりと部屋数もあるし広い小屋ではあるよな バエル: ……ちょっと、ポチ? 何をしてるの? 主人公: パイモンさんの荷物を運び終わったので、アスモさんのおやつを探し始めようかと 主人公: えーと、この部屋はなんだっけな…… バエル: その扉に触らないで!! 主人公: !? バエル: あっ…… バエル: ……言ったはずだけど。小屋の中でもあなたが自由に動き回ることは許可していない。今すぐ、その扉から離れなさい 主人公: すみません…… バエル: 勘違いしないで。あなたは下働きとして拾っただけ。仲間ではないし、同居人ですらないわ。ちょっとこなれてきて、私たちをナメてるんじゃないの (正直、図星だった。少しずつ馴染んでいる気がしていた。) 主人公: オトギノクニに来てから、受け入れられることに慣れすぎていたのかもしれない…… ベレト: なにを騒いでいるの? バエル: なんでもない。アスモのおやつは私がなんとかするから、ポチは小屋の前の草むしりでもしてきて 主人公: はい…… 5000108 - 信頼を得る方法 ルーフス・サクリファイス: アリス様。こっちからは翼の一部が出てきました。かなり激しい戦闘だったみたいですね アルブス・ツークツワンク: こちらからは、これが。おそらく『魔角』と呼ばれる部分の表面部分ですね。獣聖騎兵の攻撃を受けて欠損したのでしょう アリス・ミルズ: ……酷いわね。吐き気がするわ アルブス・ツークツワンク: そういうときはいっそ、嘔吐してしまうのも手段のひとつです アリス・ミルズ: 例えよ。特務機関の部隊長が、現場で吐いてるわけにはいかないでしょう。私たちの働きはそのまま、キャロル様の評価に繋がる。責任重大よ (……………………………。) (背景切換...) ベレト: 今日、聞いた話だけど……ディープフォレスト自治区の話、かなり被害は大きいみたいね バエル: ……この島も安全じゃないかもしれない? アスモデウス: 獣聖騎兵のやつ、どこにでも出てくるんだぞ。安全な場所なんてないだろ バエル: このクラーネオ海域には、妖精のほかは原住民がテント生活してるような場所だよ。わざわざ狙ってくるかな パイモン: アスモの言うとおり、今は安全の基準も曖昧だから。獣聖騎兵が何を狙ってるかも、本当のところは分からない 主人公: ……『獣聖騎兵』って、結局なんなんだ…… ベレト: ちょっと 主人公: あっ、す、すみません。お話の邪魔をするつもりはないんですが、この前、初めて見たものだったので ベレト: 初めて? 今まで一度も遭遇したことがなかったの? 遠くから見るだけっていうのも? バエル: 幸運にもほどがあるね。っていうより無知なんだよね バエル: そういえば、剣一本で立ち向かおうとしてたけど……まさか、獣聖騎兵の脅威を理解してなかったってこと? パイモン: 無謀よりも無知の方が救いはある ベレト: 獣聖騎兵と呼ばれる、あの異形のモノは……オトギノクニのどこにでも現れる、正体不明の『世界の脅威』よ バエル: 今のところ、出現前の予兆は定かじゃない。つまり、突然現れるの。そして…… アスモデウス: 突然、攻撃する。それも強烈で、容赦のない攻撃だ パイモン: 多くの町が焼かれた ベレト: 種族や地域に偏りがあるかもしれないという話は出ているけど、それもまだはっきりしていない。もし偏りがあるなら、あたしたち魔族は目を付けられている側、ということになるわね 主人公: 魔族っていうのは、種族の名前なんですか? あの、エルフとかドワーフみたいな? バエル: そういう解釈でいいと思う。魔族に会ったこと、ないの? 主人公: 元の時代で仲間になった中で、それっぽい子は何人か思い当たるけど……改めて聞いたことはなかったなぁ アスモデウス: そいつらの『王』っていうのが、アスモ様たちなんだ。だからすごいし、偉いんだ バエル: 私なんて序列1位なんだから 主人公: それって全魔族でトップってことですか バエル: そう、1位ってそういうものでしょ? パイモン: 序列は序列、実力は実力だけど バエル: ちょっとパイモン!? パイモン: バエルに実力がないなんて言ってない。それは私がよく分かってる バエル: もう、パイモンってば…… ベレト: まあ、とにかく……明らかに被害が大きい災害みたいなものなんだけど、詳しいことはあたしたちも分かってないのよ 主人公: でもバエルさん、俺が襲われてたとき普通に倒してましたよね アスモデウス: 1体、はぐれたヤツを倒すくらいはできるんだぞ。アスモ様たちは魔王だからな 主人公: 魔王? 主人公: 待てよ。この流れ、もしかして信頼獲得のチャンスかも……!? 主人公: あの、もしかしたら役に立てるかもしれません。実は俺、ちょっと特殊な能力があって バエル: ……っ!? パイモン: あなたが役に立てる? この事態に? 魔法も使えないのよね アスモデウス: ポチ。お前、ナメてるだろ 主人公: えっ、いえ、そんなつもりは…… ベレト: いいじゃない。無知だというなら、教えるまでよ。何も知らないままでは、あたしたちの世話をさせるにも支障が出るかもしれないでしょ? 5000109 - 微精霊が意味するもの 主人公: これは…… ベレト: つい数日前に、獣聖騎兵の襲撃を受けた町よ。これでも、中程度の被害レベルだと言われてるわ ベレト: もっとひどいところ……ディープフォレスト自治区なんかは、数え切れないほどの被害者が出たって噂ね 主人公: これが……獣聖騎兵の攻撃の跡 主人公: この、空中を飛んでいる光の玉は…… パイモン: 襲撃まで、ここの住民だった存在 バエル: あなた、微精霊のことも知らないの? 獣聖騎兵によって肉体を滅ぼされた存在は、こうして精神の核となる部分だけが残されて、微精霊になってしまう 主人公: あ、いえ…… 主人公: 微精霊の存在はずっと前から知っていた。オトギノクニに来てしばらくしてから、天空神殿で精霊について説明を受けたときに…… 主人公: でも――仲間になって戦ってくれる精霊と、何が違うのか。深く考えていなかった ベレト: 圧倒的な攻撃力。対抗するのは簡単じゃないわ。あたしたちは4人とも、種族の中でも『王』の称号を手にするほど、腕におぼえはある。けど…… バエル: それでも守りきれない……! 私たちだって、こんな酷いことを黙って見てるわけじゃないんだよ! だけど、敵わない……っ! 主人公: これは……『死』だ (それはオトギノクニで初めて、直接触れる概念だった。) アスモデウス: アスモ様は最強じゃないといけないんだぞ。配下を守れない王様なんて、そんなの嘘だもんな。だから、絶対……守れるように強く……! パイモン: 現れたのはどれくらい前だったか……たぶん、この1年くらいの間だとは思う。私たちの仲間だけでも、数え切れない被害が出てる バエル: 被害は私たち魔族だけじゃない。でも、今の時点で誰も……まともに対抗できていないのが現実…… 主人公: オトギノクニに来てから、名前があって生活を持ち会話ができる存在の『死』を意識したことは、ほとんどなかった…… (顔のすぐ横を、弱々しく光る小さな光が飛び去っていった。) 主人公: これが……オトギノクニでの…… ベレト: あたしたちは常日頃から獣聖騎兵と戦い続けている。敵わないとは言ったけど、それでも何体かは倒すことができる限られた存在だからよ バエル: 私たちは遊びでやってるんじゃないの! ごっこ遊びに付き合ってる余裕なんてないんだから! 主人公: 待ってくれ、俺だって遊びのつもりはない! アスモデウス: 本気で戦うつもりなのか? 魔法も使えないくせに? 無謀すぎるぞ 主人公: 俺は直接戦うことはできない。でも、触れたものにエルマイトを送り込むことができる。それがあれば、もっと有利に戦えるはずだ アスモデウス: ……エルマイト? なにそれ 主人公: えっ パイモン: エルマイトが何かはともかく、支援ができるという趣旨? でも、ポチの主張は論理的じゃない 主人公: アスモはともかく、知的っぽいパイモンまでエルマイトを知らない……? バエル: いい加減にしてよ。悪ふざけじゃないとしたって、そんな…… (バエルの声を遮るようにして、不意に響く鐘の音。) (ヒステリックに乱打されるそれは――) ベレト: 警報よ。獣聖騎兵が現れたわ (背景切換...) ルーフス・サクリファイス: 獣聖騎兵で間違いないわね アリス・ミルズ: ええ。パラケルスス様が作られた、この計測器によれば……まだ、残存している魔力は、『L』側に大きく傾いているわ アルブス・ツークツワンク: 私にはまだ理解できていませんが、それがつまり獣聖騎兵を示す指標である、ということなのですね アリス・ミルズ: 厳密には、天空神殿の手先――ということらしいわ ルーフス・サクリファイス: まだ獣聖騎兵が残っている可能性もゼロじゃないわ。白いの、気を抜くんじゃないわよ アルブス・ツークツワンク: 私は気を抜いたことなどありません。いつ、何があっても、アリス様をお守りします ルーフス・サクリファイス: 白いのは口ばっかりね アルブス・ツークツワンク: 頭が使える分だけ赤いのよりは良いかと ルーフス・サクリファイス: こんの……白いの、あんたとは決着を付けなきゃいけないようね アリス・ミルズ: ふたりとも、やめなさい。さっき私が言ったばかりなのよ? キャロル様をコミッティの一員とするのが、配下である私たちの役目 ルーフス・サクリファイス: わかってますよ。だからこそ、この獣聖騎兵の調査任務は重要……手柄を立てて、キャロル様を後押しするっていうことですよね アルブス・ツークツワンク: しかし、キャロル様のあのご様子……。ただコミッティ入りを目指すだけではない気迫のようなものを感じました アリス・ミルズ: それは……他人事ではないからでしょうね 5000110 - 無力な自分に アスモデウス: くっ……まだ出てくるのか。一気に片付けるぞ パイモン: 了解。突出しすぎないように注意して バエル: 大丈夫、慌てなくてもこの流れは勝てるから……! 後はこの序列1位の私にまかせておきなさい! 主人公: 楽勝とは言えないけど、確かにこれなら勝ちきれそうだ―― ベレト: ……。ポチ、ちょっと来なさい ベレト: さっき言ってたエルなんとか、やってみなさいよ 主人公: えっ……い、いいんですか バエル: ちょっとベレト!? な、なに言ってるのよっ、あんな話を信じたわけ? パイモン: 素性も不明、戦闘能力は皆無、飼ってからまだ数日。信用できる要素がある? ベレト: 試すなら戦況がほぼ決まったこのタイミングでしょ。何か手があるなら試すべきだわ ベレト: さあ、ポチ。あたしはどうすればいいのかしら 主人公: えっと……それじゃあ手のひらを出してください (そっとベレトの手を、両手で包むように握る。) ベレト: ――つ!? これは……何か圧力を感じる……。確かに、あたしの中に何か流れ込んでくるものが……! (背景切換...) (……………………………。) アスモデウス: ポチ、今日もポトフがいいぞ 主人公: あ、はい…… バエル: ……落ち込んでるの? ポチのくせにナマイキね パイモン: 誰も最初から期待してない。私は、ただ目立ちたいだけの嘘だと思ってた バエル: ベレトだって、別に期待していたわけじゃないから。いまの私たちって、長い目で見たらすごく追い込まれてるし、いい方法がないかって常に探してるの 主人公: なんか……すみませんでした…… (エルマイトは、機能しなかった。) ベレト: 確かに何かの波動は感じたわ。ポチが嘘をついたとは、あたしも思ってないわよ。ただ、効果がなかっただけ パイモン: なかったというか、逆効果だけど (エルマイトを手に入れたはずのベレトは、むしろ弱体化してしまっていた。) 主人公: 明らかに、その前よりも攻撃が通らなくなっていた……。弱体化、といって間違いない…… バエル: パイモンが言ったけど、私も正直なところ疑ってた。目立ちたいだけ、取り入りたいだけ……そんなふうに思ってたから アスモデウス: ポチが役に立たないことなんか、分かりきってただろ。みんなも別にがっかりしてない。期待してないからな パイモン: そういうこと。期待を裏切ったわけじゃない。ダメでもともと、それがダメだっただけ 主人公: フォローしてくれてるん……だよな……? 主人公: なんだかんだ、エルマイトでうまく解決してきたつもりだった。でも、それがまったく通用しないどころか、逆効果となったら、俺は…… 主人公: どうしたらいいんだろう…… アスモデウス: ポトフには肉もいれろよ。いっぱいだぞ (背景切換...) 主人公: ……役に立たないことなんか、分かりきってた……か 主人公: 歯に衣着せないアスモの言葉だからこそ、響くよなぁ…… ヴィネ?: 何をしているんですか 主人公: ――っ!? おまえは……! ヴィネ?: 信頼を得るように、と私は言ったはずですが 主人公: やってるよ! でも、エルマイトが通用しない……俺の、最大の武器だったのに ヴィネ?: ……最大の武器? 主人公: 仲間と旅してきて、俺がみんなに貢献できた唯一のことなんだ。そして、誰にもマネできない 主人公: 苦しいとき、仲間はいつも助けてくれた。俺ができることは、このエルマイトくらいだったのに…… ヴィネ?: あなたは何も分かっていませんね ヴィネ?: まず大前提として、私が依頼したことは覚えていますか? 主人公: だから、あの4人の信頼を…… ヴィネ?: 信頼とは、特殊な能力で得られるのですか? 戦う力で? 人にマネされないことで? 主人公: ………… ヴィネ?: もう一度言います。信頼を得なさい。取り入ってゴマをするのとも違います。あなたが持っているものなんて聞いていません。彼女たちに何が足りないんでしょうか? ヴィネ?: 考えてください 主人公: 俺は…… ヴィネ?: 条件をもうひとつ追加しましょう 主人公: え!? いや、待てよ、最初のひとつでさえクリアできていないのに追加って、理不尽すぎるだろ! ヴィネ?: 彼女たちを、笑顔にさせてください 主人公: ……? 騒がしい人: そろそろ時間やで。兄ちゃんと喋りたいんは分かるけど ヴィネ?: そういう下世話な勘ぐりはやめてください 騒がしい人: ま、兄ちゃんもいろいろしんどいやろけど、ここでがんばらなあかんで? 主人公: は、はい…… 主人公: 信頼……か…… 5000111 - 獣聖騎兵の標的 アスモデウス: おぉー、名前の通りって感じだな。木がいっぱいで、なんか葉っぱの匂いがもわもわしてる ベレト: このあたりは野犬なんかも多いみたいだし、できるだけ昼間のうちに移動しましょう。夜になると危険だわ バエル: そうだね。ほら、ポチ。聞いてたでしょ。キリキリ歩く! 主人公: は、はいっ…… (ある日突然、それまで使っていた拠点を離れて移動することになった。) (船に乗り、そしてこの土地に降り立ったのだが……。) パイモン: いまのところ、静かだね 主人公: 荷物をまとめるのも俺ひとりでの作業だったから、忙しすぎて……状況把握もできずに流されるままだった 主人公: 一応、事情を聞いておこう。ここがどこなのかも把握しておきたいし 主人公: あの、ここはどこなんですか? パイモン: ディープフォレスト自治区 バエル: 見ての通り、ひたすら森が続くエリアだね。森以外には、特に何があるってわけじゃないけど 主人公: ディープフォレスト……聞いたことないな。俺を知っている相手に会う確率は低そうだ 主人公: それで、どうしてここへ? アスモデウス: うん、獣聖騎兵がアスモ様たちを パイモン: アスモ、待って アスモデウス: ん? どした パイモン: 全部話す必要はない パイモン: 急にわいてきたポチを信じる根拠がない 主人公: ……信頼を得るのが俺のタスクだっていうのに、まだこんな扱いか パイモン: ポチは荷物持ち。忘れないで ベレト: いいじゃない。ポチがその話を聞いたからってデメリットもないでしょ。どこかに情報が漏れたとして、それであたしたちが困るかしら パイモン: ……それは、確かに ベレト: それに結局のところ、ポチだって他人事じゃないのよ。荷物持ちをさせるからには、あたしたちに巻き込まれるんだから バエル: 知る権利はある……ってことね パイモン: ……正直、気は進まないけど。でもベレトの言うこともわかるから 主人公: あくまでも話したくはないんだな…… パイモン: 私たちが獣聖騎兵を相手にしているのは知ってるよね バエル: 襲ってくる獣聖騎兵からみんなを守る。そのために、出現したら戦って撃退する……これを繰り返してきたの アスモデウス: でもパイモンが発見したんだ。敵が狙ってるのは町とか、住んでるやつとかじゃなくて、逆なんじゃないかって 主人公: 逆っていうのは……? 町を狙ってない、ってことですよね。ってことは相手は何を狙って…… ベレト: あたしたちよ 主人公: えっ? パイモン: 正確には、私たちのような高位の魔族 バエル: ポチは魔力を感じることはできないから実感がないだろうけど、私たちは悪魔の中でもトップクラスの魔力を持ってるの アスモデウス: アスモ様は魔族の王様なんだ。強いからな! パイモン: ずっと町を守ってるつもりだった。けど、いままでの襲撃された町や状況、被害者の情報整理をしていたら見えてきた ベレト: あたしたちは魔族の王と言われているけど、他にも高位の魔族はいるわ。これまでの襲撃で被害にあっていたのは、そういった高位魔族だったの アスモデウス: アザとかサマエルとかな 主人公: ……っ!? バエル: なに、その名前は知ってるの? 序列が上の私のことは知らないくせに? アスモデウス: アスモ様のすごさがわかってないなんて、ポチは本当に頭が悪いな 主人公: あ、いや、ちょっと聞いたことあるなってだけで……すみません パイモン: …… ベレト: とにかく、確かに高位魔族が潜伏している場所を狙い撃ちにされているのよ。高位魔族がいない町は、近くにあっても無傷だったりして バエル: 敵の狙いは高位魔族で、それ以外の住民が犠牲になったのは巻き込まれただけなんじゃないか…… 主人公: だから町を離れて、こういう人の少なそうな場所に移ってきたわけですね バエル: そういうこと。ここだって無人なわけじゃないけど、人口密度はかなり低いわ パイモン: でも逃げるだけじゃない。仲間と合流する 主人公: え……皆さんのほかに、お仲間がいたんですか バエル: ええ。実は獣装騎兵に対抗できる可能性がある武器がある……っていう情報をつかんだの。別働隊は、それを確かめに行ってる パイモン: バエル。喋りすぎ。それは漏れたら困る情報 バエル: あ……まあ、大丈夫でしょ。いざというときにポチが使える状況だってあるかもしれないし パイモン: いざというときにポチを頼るの? バエルの相棒は私だと思ってた バエル: も、もちろんそうよ!? ポチはただの捨て駒だから! 主人公: 言われようがひどい…… 主人公: でも、そうか……仲間ってもしかして、あの仮面のふたりなのかな……? 5000112 - ディープフォレスト自治区 アスモデウス: アスモ様は飽きてきた バエル: まあ、ね。ひたすら森で風景も代わり映えしないし ベレト: あ、ほら。ちょっと開けた場所に出るわよ。少し周りの風景でも見ながら、小休止にしましょうか アスモデウス: いいな! よし、ポチ。なんかして遊ぶぞ 主人公: アスモ様……休憩の意味をご存知ですか…… (森の舗装されていない道、そして緩やかながらも傾斜の連続。) (荷物を抱えて移動するには、なかなかの負担だ。) パイモン: だらしない。荷物持ちの仕事もまっとうできないの 主人公: だ、大丈夫ですよ! これくらい! アスモ様、何して遊びましょうか! 主人公: 信頼されるためには、あまり弱音は吐けないよな……! ベレト: 無理して倒れられても困るのよ。それにアスモちゃんも、ちゃんと休めるときに休んでおかなきゃだめよ? アスモデウス: んー、そっか? じゃあ昼寝するか バエル: ちょっと風景でも見ようって話だったのに、なんで寝るわけ (少し開けたその場所からは、周囲が見渡せた。) (本当にひたすら森が広がっているが、遠くには集落らしきものもある。) 主人公: あれ、だいぶ遠いですけど、高い建物が見えますね。城なんですかね アスモデウス: おー、ほんとだ! アスモ様も王様だから、ああいう城とかほしいな! パイモン: あれは城じゃない。砦 バエル: あ、そうなの? パイモン: 位置関係からすると、あれは魔法王国のトラジェディ砦だね 主人公: トラジェディ砦!? バエル: なによポチ、あの砦になんかあるわけ? 主人公: あ、いえ、ここが魔法の国だと思ってなかったのでびっくりして パイモン: ……? 魔法王国はディープフォレスト自治区のすぐ隣でしょ アスモデウス: ポチは地図が読めない系のバカなんだな。そう言えばバエルと会ったときも迷子だったんだろ バエル: そう言えばそうだったわね ベレト: ここから見えるでしょ。ずっと続いてる巨大な壁、あの向こうが魔法王国領よ アスモデウス: 迷子になったら死んじゃうぞ。ちゃんとアスモ様についてこいよ 主人公: は、はい 主人公: トラジェディ砦って確かシンデレラの王子様が戦死したっていう……? 主人公: ということは、その西側の森って……。ヴェルがいるかもしれないな。会ってしまわないように気をつけないと (背景切換...) バエル: ひどい…… パイモン: ディープフォレスト自治区も襲撃を受けたって情報では聞いていたけど ベレト: 目の当たりにすると、やっぱり心が乱されるわね バエル: ここにも高位の魔族がいたのかな パイモン: 情報によると、アズエルが潜伏してたみたいだね 主人公: ……! アスモデウス: アスモ様は、みんなを守ろうって思ってたんだ。武器を探しに行った奴らが、何か見つけてくるまでは守り抜くんだって ベレト: アスモちゃん…… バエル: そうだよね。それが王たる私たちの役割、そう信じていたのに……私たちがターゲットになっていたなんて…… 主人公: …… (重い空気がその場を支配する。) (守っているつもりが、自分たちが危険を呼び込んでいた――その事実は、使命感を持って危地に臨んでいた彼女たちにとって、かなり辛いものだろう。) パイモン: ……他に何か手がかりがないか、村で話を聞いてみよう バエル: そうね…… (当然ながら、村の中も重苦しい雰囲気に包まれていた。) (子供たちでさえ、沈んだ表情だ。) パイモン: それじゃ、獣装騎兵はすぐに北側に移動したのね 住民: はい。そうじゃなかったら、被害はこんなものじゃなかったと思います バエル: 確かに……完全に焼け野原にならなかったのは、不幸中の幸いなのかも…… パイモン: この村から北に少し行った場所で、アズエルが微精霊になってる ベレト: やっぱり仮説は間違いなさそうね…… アスモデウス: くそっ…… 主人公: …… 主人公: アスモ様、遊びませんか? アスモデウス: は? 主人公: ……ここで、落ち込んでいても村はもとには戻らないです。獣聖騎兵はもういないので戦えませんから 主人公: でも…… アスモデウス: …… (俺が視線で促した先には、不安そうに立ち尽くす子どもたちの姿がある。) 主人公: 笑えなくなった子どもたちは、目の前にいますから アスモデウス: ……何して遊ぶか、決まってるのか 主人公: 一応。だるまさんが転んだっていうんですけどね アスモデウス: よし、ポチ。ついてこい。全員転ばせてやる 主人公: そういう遊びではないです バエル: ポチってば、ずいぶん偉そうなこと言うようになったね ベレト: ふふっ、そうね…… パイモン: 私たちは痕跡が何か残ってないか調査するよ (背景切換...) (………………………。) 主人公: ふう……あとは明日に備えて荷物をまとめておくか (その夜は、住民から借り受けた村外れの小屋に泊まることができた。) (なんだかんだで、屋根のある場所で眠れるのはありがたい。) ベレト: ポチ、まだ働いてたの? アスモちゃんなんて、もうすっかり夢の中なのに 主人公: あ、すみません。うるさかったですか? ベレト: そうじゃないわ。ただ、明日も働いてもらわなきゃいけないから、休んでおかないと困ると思って 主人公: 大丈夫です。もう明日の準備が終わったら寝ますから…… ベレト: あと、少し話したくて 主人公: えっ……? 5000113 - 9人の王 ベレト: なんだっけ? だるまさん? ベレト: アスモちゃんと一緒に遊んでたこと、ちゃんとしておきたくて 主人公: あ……。す、すみません、出過ぎた真似をしてしまって ベレト: ううん、いいの。ああやって言ってくれたこと、少なくともあたしは良かったと思ってるから 主人公: そう、ですか……? なら良かったです ベレト: あたしたち王に選ばれた9人は、正直まだまとまりきれてないのよ。個性も強すぎるし、みんなそれぞれが勝手に行動しちゃってる ベレト: だから、何気ないああいうフォローとかができる段階じゃないのよね。パイモンとバエルみたいに、もともと仲が良かったところは別だけど ベレト: それでも獣聖騎兵が出てきて、なんとなく絆みたいなものはできつつあるけどね 主人公: 9人、ですか? あ、合流する別働隊も魔族の王様なんですね ベレト: ええ、そうよ。みんながそれぞれ、王としての使命をそれなりに背負って……だから、どうしても肩の力が入り過ぎちゃうのよね ベレト: だから、王でない立場の相手――つまりポチみたいな存在と接することって、わりと大事なのよ。もっとも、ポチも焦ってるみたいだったけど 主人公: えっ……!? そ、そうですか? ベレト: ええ。あたしたちの世話をするようになってしばらくはね。でも今日は、そういうのが抜けて、いい感じだったと思う 主人公: 信頼を得なくちゃ、って気持ちが空回りしてたのかも。そういうのって、やっぱり表に出ちゃうんだな…… ベレト: たぶん、あの変な能力が不発だったことも気にしてるんでしょうけど……あれ、意外と嫌な感じではなかったのよね 主人公: エルマイトを使ってもベレトを強化できなかった件だな……。せっかく能力を活かせると思ったのに…… ベレト: きっと、戦闘力を強化するんじゃなくてリラックス効果があるんじゃないかしら。温かくて心地よかったし、他に使い道があるわよ 主人公: そうですね。皆さん、ずっと張り詰めてる感じがしますし、リラックスも必要ですね 主人公: 少し落ち着いたら、どこかリゾートにでも出かけてのんびりするのもいいかもしれませんよ ベレト: リゾート? それはどういう場所なの? 主人公: えっ? えーとほら、ヌルズブ島とか ベレト: 聞いたことないわ。そこに行くと癒されるの? 主人公: そうか、この時代にはまだリゾートっていうものがないのかも…… ベレト: じゃあ、ポチ。あたしをそのリゾートって場所に連れてって ベレト: 約束よ? (背景切換...) パイモン: ふう…… バエル: ちょっとパイモン、ふらふらしてるわよ ベレト: そういうバエルだって顔色が良くないみたいよ。ふたりとも、昨日はずいぶん遅くまで作業していたみたいだけど パイモン: 私にできることは、敵の情報を分析すること。できるだけ早く何かつかみたくて ベレト: 気持ちは分かるけど、焦りは禁物よ。疲れた頭じゃ、効率だって良くないわ。バエルも、パイモンを手伝っていたの? バエル: ええ、パイモンががんばってるんだから、私だって…… アスモデウス: あ、おい、バエル! 足元! バエル: きゃっ!? (張り出していた太い木の根につまづきそうになるバエル。) (とっさに身体を支えようと、荷物を放り出して手を伸ばそうとしたが――) バエル: っと……危なかったわ パイモン: ポチはそこで何やってるの (バエルは自力で体勢を立て直し、構えていた俺だけが取り残された。) ベレト: バエルを支えようと思ったのかしら? バエル: 序列1位の私が、ポチなんかの助けを借りるわけないでしょう。それより放り出した荷物、壊れたりしてないでしょうね 主人公: うっ……す、すみません アスモデウス: おい、そんなことより誰か来るぞ。すっごい魔力だけど、これって パイモン: 予定通り。時間ぴったり バラーム: なーにが時間ぴったり、ですの? 先に来てわたくしたちを出迎えるべきところ、どういうつもりかしら? ザガン: あらあら、バラームちゃんたら~。そんなにみんなに会いたかったのね~? バラーム: そ、そういう意味じゃないわよ! プルソン: ねえ、ザガンちゃん。ぷるの知らないひとがいるよ バエル: ああ、そうね。一応、紹介しとくわ。荷物持ちの奴隷、ポチよ 主人公: 奴隷って言い切られた! バエル: みんなも好きに使って構わないからね。もちろんバラームも、お好きにどうぞ バラーム: ふんっ、あなたのお世話になんてなりませんわ! ザガン: じゃあ、おねえさんはさっそくお願いしちゃおうかなぁ~? ポチちゃん、だったわね。はい、荷物お願いね 主人公: うそだろ、まだ増えるのかよ…… バエル: 何か文句でも? 主人公: いいえ、よろこんで! バラーム: わたくしは結構ですわ! 自分の荷物くらい、自分で持ちますので! プルソン: バラームちゃん、いじっぱりだ バラーム: プルソンさんは余計なことを言わないでくださる!? パイモン: それで、そっちの状況はどう? バラーム: ああ、そうでしたわね。一応、成果はあり、ですわ バエル: ここぞとばかりに得意げな顔しちゃって…… ザガン: 有力な武器情報をつかんだのよ~。ここから東にずぅっといったところにある、バイノルドアトラス島ってところなんだけど パイモン: バイノルドアトラス……ってことは、ここからだと魔法王国を越えて海に出るルート バラーム: そうですわね。ここからだと<ミュール・ドゥ・セパレ>があるから、南のグラッスィ山脈から迂回するしかないけど 主人公: ……えっと 主人公: ヴェルの実家近くの森のはずなのに、地名がまったく聞き覚えのないものばかりだ……。これが時代の流れってことなのか? ベレト: ああ、ポチはよくわかってないのよね。あの巨大な壁が見えるでしょう? あれが<ミュール・ドゥ・セパレ>よ。この島を南北で真っ二つに分断してる壁 バエル: 壁を越えるのは不可能でしょ。だから、壁が途切れる南側の山岳地帯から魔法王国領に入るってわけ 主人公: な、なるほど。山越えですか…… (人数に比例して増えた荷物を横目に、絶望的な気持ちになる。) プルソン: にもつ、たいへん? 主人公: あ、いえ、これくらい大丈夫です プルソン: ブラッディはぷるがだっこしていくから 主人公: ブラッディ? ザガン: このおっきなクマちゃんのことよ~。ぷるちゃんはブラッディと仲良しなのよね~ バエル: じゃあ、目指すはグラッスィ山脈ね。行くわよ! バラーム: なんであなたが仕切ってるんですの!? 5000114 - 少しずつ積み上げて (その夜は野宿になった。) (にもかかわらず、この夜もパイモンは何か作業しているようだった。) (みんなの眠りを妨げないためか、野営地から少し離れた場所へ向かったようだ。) (俺は差し入れにと、熱いお茶を水筒に入れて彼女を探した。) 主人公: これくらいしかできないからな。本当は甘いものでもあればいいんだろうけど…… ヴィネ?: こんな真夜中の森で、何をしているんですか 主人公: ……久しぶりに出てきたな ヴィネ?: 私も忙しいので。見たところ、それなりにうまくやっているようですね 主人公: なあ、確か名前はヴィネだったか? そろそろ腹を割って話さないか。魔族の王らしく、堂々と―― ヴィネ?: ……! 騒がしい人: ま、しゃーないで、ヴィネ。ウチらが魔族の王っちゅーことは、隠し通せるもんでもないやろ ヴィネ: ……そうですね。あなたがこちらの指示に従うことも確認できましたし ヴィネ: ご認識の通り、私は9人いる王のひとり。ヴィネと申します ベリアル: ウチはベリアルや。こう見えてもヴィネとはラブラブな恋人関係なんやで 主人公: えっ……。そ、そうなのか。なるほど…… ヴィネ: ベリアル!? なんでそんな嘘つくんです!? ベリアル: いや、こいつがウチらに変な気起こさんように牽制しといたろ思て 主人公: こんな世界の危機みたいな状況で何もしないって! 主人公: まあ、仮面をはずしたら思いのほか可愛いな、と思ったのは事実だけども…… ヴィネ: おそらく、あなたが知りたいのは私の狙いでしょう。何も情報を渡していませんからね 主人公: なんとなくは分かってる。獣聖騎兵っていう敵に世界のいろんなとこが襲われてて、あの7人……いや、おまえたち9人はそれを救おうとしてるんだな 主人公: きっと、俺のエルマイトをうまく使って戦うってことだったんだろうけど……。それにしたって、一番わからないのはどうして別行動なのかってことだ ベリアル: エルマイトってなんや? 兄ちゃんが特殊な才能を持っとるようには思えへんけど ヴィネ: ……そうですね。私の能力についても説明しておく必要がありますね ヴィネ: 私には……未来を見通す力があります。いわゆる未来視、というものです 主人公: 未来を……!? ヴィネ: 無意味な能力です。見えていたからといって避けられるとは限らない。それはもう、痛いほど実感してきました。けど…… ヴィネ: ようやく見つけた未来の風景に、あなたがいたのです。私が見たあなたは、あの7人から信頼されていました ベリアル: けどな、こういうんは断片的で、全部見れるもんでもないらしいんや。せやから、どうやって兄ちゃんがみんなに信頼されたんかは知らん ヴィネ: 信頼されることと、危機を脱することがどうつながるのかもわかりません。ただ、あなたが必要だということは確かでした 主人公: 俺のエルマイトのことは知らずに呼び出したのか……。でも、エルマイトで戦う以外にどうやってこの状況を変えられるっていうんだ…… ヴィネ: きっと何か方法があるはずです。私も随時、未来視は続けています。何かわかれば追加の指示を出すつもりでした 主人公: 事情はわかった。でもまだ疑問に答えてもらってない。どうして別行動なんだ ヴィネ: 私は、未来視の能力についてベリアル以外に話していません。急にこの段階で伝えても、信じてもらえない可能性もあります ベリアル: 信じたとしてもや、未来がもうわかってもうてるんやったら、やる気なくすかもしれんしな。せやから、兄ちゃんのこともウチらから紹介できへんかったんや 主人公: ……パンドラの箱、ってやつだな。箱を開けて最後に残るのは『希望』ってわけだ ヴィネ: なんですか、それは。あなたの世界の伝承ですか 主人公: いや……事情はわかった。とにかく、何か見えたらすぐ共有してほしい。いまの俺にできることには限界がある ベリアル: せやな。とりあえず地道に信頼関係を作っていってや 主人公: いまもパイモンに差し入れするところだよ。あ、お茶、冷めてないかな…… (……………………。) (ヴィネたちと別れ、パイモンのもとにたどりつくと、) (地面に何か魔法陣のようなものを描きながら、パイモンが唸っていた。) パイモン: これは魔法の研究。獣聖騎兵に対抗できるように 主人公: パイモンさんひとりで、ですか パイモン: 私たちはそれぞれ得意なものがある。私は、こういうの パイモン: 毎晩バエルを付き合わせるわけにもいかない 主人公: それはそうですが…… パイモン: ねえ、ポチは何者なの? どうしてこんな差し入れまで 主人公: 俺はただ、何か力になりたい、それだけです パイモン: それが変。給金も払ってないのに 主人公: 自分の力不足で誰かが泣く……そんなのは、もう見たくないんです (それは本心だった。) (自分が圧倒的な力を持っていたら、ピュルテたちだって楽できるはずで。) パイモン: ふうん……。まあ、詳しくは聞かないけど…… 主人公: パイモンさんは? 王としての使命感ですか パイモン: ポチと同じ (そう言ってパイモンは、小さな鈴を握った。) 5000115 - グラッスィ山脈での襲撃 アスモデウス: おい、ポチ。四つん這いになれ 主人公: ええ……? アスモデウス: いいか、プルソン。乗馬のコツを教えてやる プルソン: うん。お馬にのれるようになってみたい 主人公: 俺を馬に見立てて乗っかって。乗馬術なんか身につくのか……? ベレト: ふふっ、アスモちゃんもすっかりポチになついたわね バエル: ふん、まあ本来の仕事を忘れずにきちんとやるなら、いいんじゃないの。遊び呆けて仕事をサボったらタダじゃおかないけど バエル: ほら、ポチ! 遊んでばかりいないで、私の荷物を片付けておきなさいよ バラーム: 嫌ですわ。奴隷相手にヤキモチでも妬いてるんですの? バエル: はあ? 単純に持ち物だからよ! 自分の持ち物をみんなが使ってるんだから、たまには所有権を確認しておきたいってだけ! ザガン: はいはい、みなさん。そろそろ休憩終わりにしますよ~ プルソン: ざんねん。またこんどね アスモデウス: 次はアスモ様の鞭さばきを伝授してやるからな! 主人公: ひぃっ……絶対俺が辛いやつ バエル: ここから山頂までの道は、どんどん険しくなっていくわよ。荷物をしっかり持って、落とさないように! 主人公: 容赦ないな…… 主人公: けど、最初に会った4人とは、少しずつ距離は縮まってる気がする。一番、距離のあったパイモンとも少し話せたし…… パイモン: ! パイモン: ポチ、何じろじろ見てるの 主人公: あ、いえっ (背景切換...) (それからしばらく山登りを続けていく。) (気がつくと、地面に白いものが積もり始めていた。どうりで寒いはずだ。) プルソン: う、ううっ、さむい。ぷる、こおりついちゃう バエル: 山頂付近は気温が低いとは聞いてたけど、これじゃまるで雪国じゃないの……! バラーム: あ、あら、バエルさん? この程度の寒さで音を上げているんですの? 序列1位の名が泣きますわね バエル: は、はあ? この程度、なんともないし! 雪国みたいって言っただけで、辛いなんてひとっことも言ってないんだから! パイモン: またバエルは、わけわかんない挑発に乗って…… ベレト: 気をつけて……! 正面、獣聖騎兵よ! プルソン: ぷる、いくよ アスモデウス: アスモ様とプルソンで、ぼっこぼこにしてやるぞ! (それまでの穏やかな空気から一変、緊張感が場に張り詰める。) (上空から飛来した獣聖騎兵が、その鋭い爪のようなもので攻撃を仕掛けてくる。) ザガン: くううっ! みんな、おねえさんが受け止めてる間に! アスモデウス: でかした、ザガン! アスモ様の恐ろしさ、見せてやるぞ!! (かわせば身を翻して次の手を打ってきたかもしれない。) (だがザガンが受け止めたことで、獣聖騎兵の位置は固定された。) (そこを側面からアスモデウスが、そしてプルソンが挟撃する。) アスモデウス: らぁああああぁぁっ!! プルソン: はいった、きいてるはず バラーム: あっ、逃げるわよ! (攻撃を受けた獣聖騎兵は、バランスを崩しながら山頂方面へと後ずさるように後方移動する。) アスモデウス: こんの……アスモ様にケンカ売っといて、逃げられると思ってるのか! プルソン: おいかける。血をみるまでは終われない バラーム: 確実に仕留めますわよ! パイモン: あ、ちょっと、みんな……! バラーム: わたくしも手柄を立てさせていただきますわ! バエル: ふん、調子に乗らないでよ! あなたより先に私が仕留めるんだから! パイモン: バエルまで……! そんなに攻め急ぐ必要はないのに ベレト: 仕方ないわね。私たちも置いていかれないように追いかけるわよ。ザガン、周辺の警戒をお願い ザガン: はぁ~い。いまのところ、あの一体だけみたいだし、落ち着いていきましょう~ (細い山道を通って、獣聖騎兵を追いかける。) (弱った相手を追い込むはずだが、思ったより速いのか、先頭のアスモたちの姿がかなり遠くに見える。) ザガン: ……っ!? ベレトちゃん、後ろよ! ベレト: いつのまに……っ! 主人公: 後ろから……! アスモさんたちが追いかけてるのとは別口か (ベレトは相手の攻撃をひらりとかわし、距離を保つ。) パイモン: 挟撃されてる! バエルっ! みんな、戻って! ベレト: パイモン! 気をつけて、そっちを狙ってる! (ベレトの叫びと同時に光弾が発射される。) (それはパイモンの顔をかすめて――) 主人公: 崖に直撃!? しまった……! パイモン: 土砂が……崩れる……っ! (破壊された山肌が崩れ落ち、土砂となって道を塞いだ。) パイモン: 分断された……! しかもこっちは消耗していない騎兵を相手にしなきゃいけないのに…… ベレト: こっちはなんとかしのぐから、合流する方法を探して! パイモン: うん……わかった……! 主人公: バエルさん! バラームさんも! この土砂を攻撃の衝撃で突き崩せませんか! バエル: 言われなくてもやってるから! パイモン: こっちからも私が掘り進める! プルソン: ぷる、ぜんりょくでいく。まってて、みんな バラーム: 通れればいいのですから、一点集中させるのですわ! みなさん、ここを狙って! 主人公: よし、思った以上にみんなの攻撃が強い。どんどん土砂をはねのけてる。このペースなら合流もすぐに…… バエル: よし、これで通れる! みんな急いで! アスモデウス: 今度こそアスモ様の力を思い知らせてやる! ザガン: みんな、間に合ったのね~ ベレト: でも、あたしたちだけでも結構やれたのよ? (そう言って重い一撃を獣聖騎兵に食らわせるベレト。) (相手は後ろによろめいた。その隙に距離を確保しようと、ベレトが下がりながらこちらを振り向いて――) ベレト: なんてね。正直ホッと―― パイモン: !? ベレト: ……っ、あ、あれ……なに、これ……? どう、なって……ぐ、ぶふっ…… (ベレトの腹部から何かが生えていた。) 主人公: あれは……獣聖騎兵の腕!? ベレト: なに、よ……それぇ……ぐふっ、腕が伸びるなんて、聞いてな……い……ごふっ…… アスモデウス: ベレトぉおお――っ!! (貫いた腕が引き抜かれると、ベレトはまるで木の葉のように、力なく地面に倒れ伏した。) 5000116 - 葬送曲 プルソン: こんなにさむいのに、ベレトちゃんかわいそう バエル: ……もう、これはベレトじゃないんだよ (唇を噛み締めたまま、バエルは肩を震わせた。) (俺たちの前にはいま『ベレトだったもの』が横たわっている。) 主人公: もう無茶振りしてくることも、ない…… (笑いかけてくれることも、ない。) バエル: ベレトは微精霊になったの。だから、これはもう、魂を失った抜け殻 バラーム: すごく……美しい人だと思ってましたわ。なのに、こんな……最期がこんな姿だなんて、惨すぎますわ! (獣聖騎兵に貫かれた腹部からは大量に出血し、周囲の雪を真っ赤に染めていた。) 主人公: 人間界の知識で言えば、失血死か…… バラーム: もっと美しくして見送ってさしあげたいのに……お辛そうな顔で……。獣聖騎兵は、どうして……なんのために、こんなことを……! アスモデウス: アスモ様はまた、守れなかった。すまない、ベレト ザガン: ううん。わたしが一番、そばにいたのに……何もしてあげられなかった……守れなかったのはわたしよ パイモン: ザガンもアスモも、自分を責めないで。私たち全員が少しずつ責任を背負ってる プルソン: ……さよならだね、ベレトちゃん。ぷるに優しくしてくれてありがとう (俺も含め7人で、ベレトの身体に土を被せていく。) プルソン: るーるる……るるる…… (ふいにプルソンが、何かの旋律を口ずさみ始めた。) (次第に、他の面々も続く。) (大切な人との別れを惜しむ曲なのだろう。) (彼女たちが掠れた声で歌うのを聞きながら、俺は……。) バエル: ポチ、あなた…… パイモン: ひどい顔 主人公: え……? あ、あれ、まいったな……すみません、みっともないところ見せて (涙腺が壊れてしまったように、涙がとめどなく流れる。) ザガン: ポチちゃんも、ベレトちゃんのこと大切に思ってくれてたのね パイモン: なんで。こき使われて怒ってたんじゃないの アスモデウス: ベレトはポチに、ちょっと優しかったかもな 主人公: だって……だって、あんまりじゃないですか 主人公: ベレトさんが何をしたんですか。どうして狙われなきゃいけないんですか。魔力が高いというだけで! バエル: ポチ…… 主人公: 武器があるとか言ってましたけど、倒せる保証なんてないんですよね。もう、やめませんか パイモン: 何を言い出してるの。私たちの活動に口出しする立場じゃない 主人公: だけど見てられないんです! どうして戦うんですか。逃げて、ずっと遠くまで逃げて、そこでみんなで普通の暮らしをしたほうが バラーム: できることなら、わたくしだってそうしたいですわ! 主人公: !! バラーム: わたくしたちが何も恐れない戦闘集団だとでも思ってますの? 違いましてよ。当たり前に怖いですわ バラーム: でもそれぞれ戦う理由があるのですわ パイモン: 逃げられる保証もない ザガン: そうね。逃げ切れたかどうか、判断も難しいもの ザガン: 逃げ続けるより、立ち向かうほうが精神的には楽だと思うわ アスモデウス: アスモ様は王様だからな。逃げるわけにはいかないんだ プルソン: ぷるは、こわいとかはわかんないけど、ベレトちゃんのカタキは討ちたいな バエル: こういうことだから。ポチにとやかく言われることじゃないわ。私たちの道は自分で決めるの 主人公: ……すみません。つい感情的になってしまって バエル: ……でも、そう言ってくれたの、悪い気はしなかったわ バエル: 言ってもらうことで、私たちは自分の意思で立ち向かってるんだって、再確認できた気がするから パイモン: ん。私たちはもう、進むしかない アスモデウス: じゃあ、行くか ザガン: いつまでもここで騒いでいたら、ベレトちゃんも眠れないわ バラーム: そうですわね。凍えてしまいますし (まだ、過酷な山越えは始まったばかりだ。) (俺たちは意を決して、再び歩み始めたのだった。) (………………………。) (背景切換...) 主人公: 夕方はだいぶ吹雪いたけど……夜になって治まったみたいだな バラーム: ポチさん。ちょっとよろしいかしら 主人公: あ、はい。どうしましたか バラーム: いえ、頼み事をしたいのではなくて、少しお話をしておきたくて バラーム: 昼間のことですわ。取り乱してしまって、お恥ずかしいところをお見せしましたわね 主人公: いえ、あんなことがあったんですから……。俺も動揺して、皆さんにとんでもないこと言ってたと思いますし バラーム: 本当はね、わたくしも怖くてすぐにでも逃げ出したかったのですわ。でも、貴族の誇りにかけて、それはできません バラーム: それに、ここで逃げ出したらベレトさんの犠牲はどうなってしまいますの 主人公: ……! そうですよね、ベレトさんのためにも獣聖騎兵を倒さなきゃ……逃げたりしたら、申し訳が立たない…… 主人公: 俺が浅はかでした。その場の感情だけで口走ってしまって バラーム: 責めるつもりなどございませんわ。ただ……わたくしは、あなたも荷物持ちと言えども一員だと思っておりますの バラーム: ですから、ベレトさんを慕っているのなら、同じ気持ちでついてきてくださいませ 主人公: はい。わかりました 主人公: 一員、か……。そうだな、俺もベレトのために…… 5000117 - 一縷の望み バエル: はぁっ、はぁっ……こんな険しい山道だなんて、聞いてないわよ……。あとどれくらいで頂上なの? プルソン: おうち、かえりたい…… パイモン: 気持ちは分かるけど、私たちに帰る家なんてない バラーム: 御覧なさい、パイモン。わたくしたちよりも脆弱で何の能力も持たないポチが、荷物を持ちながら進んでいるのですから プルソン: あう……ぷる、がんばる…… 主人公: なんか言葉のチョイスがひどいけど、本質的には褒めてるんですよね? アスモデウス: 強い武器のためだ、アスモ様は最強だからこれくらい、なんでもないぞ ザガン: 山を下りたら、あったかいごはんを用意しましょうねぇ~。本当は海路で回れたら良かったんだけど バエル: そういえば、確かにその選択肢はあったはずだよね。どうして山越えすることになったの? パイモン: いま、このあたりの海は危険 バラーム: 獣聖騎兵のせいで、魔法王国の騎士団が警戒中なのですわ。検問に引っかかると数日は拘束されるでしょうし プルソン: つかまってるときにおそわれたら、たいへん 主人公: そんな感じなんですか、魔法の国……あれ、魔法王国でしたっけ ザガン: ええ、獣聖騎兵の正体がわからない以上、どの国も手当たり次第に警戒するしかないのよねぇ パイモン: 獣聖騎兵を操っている存在がいるかもしれないし アスモデウス: 見慣れないやつが国に入るのは怪しい、ってことだな バエル: 敵の情報がなさすぎるよね。いろいろわかれば、みんなで協力することもできるはずだけど バラーム: 未だに天災なのか、それとも誰かの意図が働いているのかすら明確ではありませんし パイモン: 高位魔族が狙われるという私の仮説が正しいとして、獣聖騎兵の本能かもしれない。誰かが裏にいる可能性も、もちろんあるけど 主人公: 高位魔族……たぶん判別は、魔力の大小だろう。狙い撃ちにする理由……何かひっかかるな…… (背景切換...) ペロー: 相変わらず、お忙しそうですね レグルス: ……あなたですか、ペロー レグルス: ライブラが遺した膨大な資料を読み込むだけで、かなりの時間を必要としますからね。グランド・リヴィジョン関連に限っても手が回りません ペロー: 例の作戦は順調なようですね。ディマイト濃度は激減しているとか レグルス: 高度ディマイト保有者を弱体化して、精霊化する……。これで天空神殿体制は盤石のものとなるはずです レグルス: ライブラの描いた理想は、誰にも邪魔させない……! ペロー: 聞いたところでは、あのジャバウォックはもちろん、原初の三獣のベヒモス、アズ・エルなども精霊化に成功したとか ペロー: ただ、その件でお耳に入れておきたいことがあるのですよ レグルス: ……? ペロー: 今回のこの作戦、自動操縦装置<オート・マキナ>によって精霊化を行っているのだと思うのですが レグルス: ええ、おそらく ペロー: おそらく? レグルス: 秘術によって装置が動きだしたのは確認しましたが、それらがどのように作用して精霊化しているのかは、私も具体的に把握していませんから ペロー: ……なるほど レグルス: それがどうしたというのですか ペロー: ディマイト勢力側で、オート・マキナを破壊する手段を模索しているようです。もちろん現在も破壊は可能ですが、より効率的にということですね レグルス: 破壊、ですって……? ライブラが遺してくれた貴重なものを……!? ペロー: ええ、まったくおっしゃる通りですよ、神官長。このままでは貴重な遺産が失われますし、作戦遂行にも支障が出るでしょう レグルス: ……あなたのその口ぶり、対策を考えているのですね ペロー: ご賢察の通りです。そのために、例のアレをお貸しいただけないかとお願いにあがったのです ペロー: 原初の時代に空から降り注いだと言われる秘石『ヴェルザーム』をね…… (背景切換...) ベリアル: なあ、ヴィネ。もうぼちぼち、みんなと合流してもええんちゃうか? ヴィネ: ……まだです。私たちはまだ敵の正体を突き止めきれていません ベリアル: せやけど、だいぶわかってきたこともあるやろ。みんな、アレが天空神殿から来とるっちゅうことも知らんと戦っとるんやで ヴィネ: 黒幕がわかったところで、襲撃を止められるわけではありません。通常の獣聖騎兵ならともかく、あの個体は生半可な方法では討伐できませんし ベリアル: それはザガンたちが、うまいこと探してくれとるんと違うんか ベリアル: ウチらは倒す方法はおいといて、元から解決せなアカン言うて動いとるわけやん ヴィネ: ええ。ですがまだ、未来から来た彼をどう活かせるかもわかっていません ベリアル: それやったら、余計に兄ちゃんとこおったほうがええやろ ヴィネ: ……それは、確かに ベリアル: まあ、みんなは今ごろ山越えやろ。魔法王国あたりでちょっと顔出しとこうや ヴィネ: ……そうですね。その前にひとつだけ、確認しておきたいですが…… 5000118 - ほんの少しの積み上げた信頼 バエル: ふう……ここまで来ると、街道もあって歩きやすいね バラーム: バエルさんには少々きつい道のりだったかしら? 普段は序列1位だとか大きなことを言ってらっしゃいますけど バエル: そっちだって息が上がってたじゃないの! ザガン: あらあら、ケンカはだめよ~? アスモデウス: このふたりは、顔を合わせるといつもこうやって張り合うからな プルソン: しかも、なんかつまんないことでだよね バエル: う、うるさいな。それよりこれからどうするわけ? プルソン: あったかいごはん、たべるっていってたよね ザガン: そうだったわね~。じゃあ、まずはどこか町を目指しましょうか。どっちにしろ、港まで行くまでに旅支度は整えておきたかったし 主人公: あ、あの……! パイモン: ポチ? なんなの バラーム: やっぱり荷物が重くて、もう動けないんじゃありませんの? バエルさんの荷物は特に無駄に重いでしょうし バエル: はあ? なんでよ バラーム: 厚化粧するのに大量の化粧品が必要でしょう? バエル: あなたと一緒にしないでくれる!? バラーム: なんですって! ザガン: もう、ふたりとも落ち着いて~。ポチちゃんが何も言えなくなっちゃうわよ アスモデウス: いいから、遠慮しないで言っていいぞ 主人公: あの、お願いがありまして……。町に行くのはいいんですが、帝都には……この国の首都には近づかないわけには、いかないでしょうか…… (シンデレラがお忍びで城下町にやってきては居酒屋巡りをするようになるのが、果たしていつからなのか正確にはわからない。) 主人公: でも、可能性はできるだけ排除しておかないと…… パイモン: 首都に近づきたくない……? ザガン: ここから港を目指す分には、首都は通り道ではないから大丈夫そうよ~ バエル: ポチの言いなりになるのも面白くないけど、這いつくばって頼むなら仕方ないわね バラーム: でも、どうして…… バラーム: もしかして、ポチさん……あなた、お尋ね者なんですの? パイモン: 素性を明かさないのも、無給なのに旅についてくるのも、追手をかわして逃げるため……? 主人公: あー、いや、えっと…… バエル: 安心して。私たちは別に、あなたを衛兵に突き出すようなことはしないわ パイモン: そうだな。どんな罪を犯したのか知らないが、ポチのことだからしょっぱいやつだろ。なんか盗んだとか 主人公: そ、そうですね……。そんなところです プルソン: ぷるも、わるいこ。いっしょだよ ザガン: プルちゃんは悪い子じゃないわよ~? 獣聖騎兵といっぱい戦ってくれるでしょ? ちょっとやりすぎちゃうだけ バラーム: そうですわね。こうして一緒に旅をして、あなたがむやみに誰かを傷つけるような人ではないとわかっていますわ バエル: ええ。荷物持ちが減るのも痛いし バラーム: まあ、お気に入りだから手放したくないと、素直におっしゃったらいいのに バエル: そうじゃないったら! 主人公: ……あ、ありがとうございます 主人公: 誰かを傷つけるような人じゃない、か……。これって一応、信頼され始めてるってことで、いいのかな……? (背景切換...) プルソン: ひさしぶりのまちだね バラーム: ですわね。ここのところ森とか山とか、大自然にもまれすぎですわ アスモデウス: よし、さっそくなんか食べに行くか! バエル: ねえ、パイモン。大丈夫なのかな パイモン: 私たちが狙われてるっていうのは、あくまでも仮説。100%の話じゃない パイモン: それに、みんなの顔見て。住み続けるのは無理でも、たまには立ち寄らないと バエル: ……そうだよね (背景切換...) 紫式部: それでは定例報告ですけど……レオナさん、お願いします レオナ: ん。あのね、例の獣聖騎兵なんだけど、わかったことがいくつかあるわ。まず、破壊は可能ってこと ジャコヴァ: なら結論は出たな。すべて破壊しろ パラケルスス: まーた、ジャコヴァはそうやって結論を急ごうとする。最後まで聞きなって レオナ: 破壊するには高純度のイマジュマイトが必要になるのよ。実現するには当然、高位の保有者が必要になるけど、それだけじゃないわ レオナ: このオトギノクニに現存する保有者では足りないのよ。だから何らかの装置を使って増幅する必要があるわね ジャコヴァ: ふむ…… ヴィルヘルミナ: パラケルススが研究しているブースターね。それが実現できれば、破壊に必要な量を確保できるわ ジャコヴァ: うんうん パラケルスス: ゼロを1にするのは困難を極めるけど、1を何らかの方法で2にすることはできる。この天才の頭脳を持ってすればね アイソーポス: だが、その研究はまだ完成していなかったはずだが パラケルスス: そりゃあ簡単じゃないさ…… パラケルスス: って、おい、ミシェル。鼻で笑ったな。この僕をバカにするなんて……! 紫式部: おふたりとも、ここは議場ですよ ペロー: ……獣聖騎兵の破壊にブースター、か……。ということは、もしかすると『あの武器』とは…… ペロー: なるほど、うまく使えそうですねぇ…… 5000119 - 宿敵関係 紫式部: レオナさん、わかったことは『いくつか』あるとのことでしたけど? レオナ: うん。獣聖騎兵のボディを一部、入手することに成功したわ。そこから分析を進めて……あれの行動原理の軸になってるのは、高位イマジュマイト保有者だとわかった ジャコヴァ: ……やはりか 紫式部: 原初の三獣がいずれも精霊化されたのは偶然じゃないというわけですね レオナ: 正確にいうと、最近の基準で言えば『ディマイトが高い』ことが条件ね。だから、私たちは狙われてないんだと思う ジャコヴァ: だが、それも時間の問題だろう アイソーポス: 天空神殿にエルマイトを握られた現在、我々が頼るのはひとつだ カロラ: んじゃ、やっぱり獣聖騎兵はレグルスのやつの手下ってことか! レオナ: 手下というと語弊があるわね。実は、これも新たにわかったことのひとつだけど……あれらが魔術制御された一種のオートマトンだとわかったの ジャコヴァ: む……オートマトンだと ヴィルヘルミナ: ということは、あれは生物ではなく……独立した意志や感情も持たない、単なる操り人形ということね ジャコヴァ: ああ…… カロラ: ってことは、あいつら何匹か……いや、何個かいるっぽいけど、操ってるやつはひとりだけってことか アイソーポス: あれだけのパワーを持つオートマトンを、少なくとも5体以上は同時に操作しているというのか レオナ: 厳密には、術者は基準を与えているだけよ。リアルタイムで複数個体を操作しているわけではないの。基準に従って勝手に動いてるのよ 紫式部: バカな……基準と言っても、大雑把なものではあそこまで統率するのは難しいはず…… パラケルスス: それだけきめ細かな調整を仕込めるなんて、そんなの…… レオナ: ええ、みんなが想像している通りよ。術者は、ライブラ ジャコヴァ: つまり、私たちは亡霊を相手にもがいているというわけか。空の上から眺めていれば、さぞかし滑稽なことだろうな……! (背景切換...) アスモデウス: ここから、どう進むんだ? ザガン: 魔法王国の東海岸に抜けて、港で船を調達するわ。そこから海を東に進んでバイノルドアトラス島を目指すのよ~ プルソン: ぷる、ふなよいしちゃいそう 主人公: バイノルドアトラス島……? また聞いたことのない地名だが、変わってる可能性があるから用心しないとな…… 主人公: 魔法の国、東海岸……何があった場所だったんだっけ……くっ、思い出せない…… アスモデウス: どうした、ポチ。なんか難しい顔してるぞ プルソン: ぽちも、ぷるとおなじでふなよいこわいんだ バラーム: プルソンさんと違って、あなたがそんな心配をしても可愛くありませんわよ 主人公: いや、そうじゃなくて バエル: ……わかってるわよ。獣聖騎兵を倒せる武器なんて、そんな都合のいいものが本当にあるのか……信じられないわよね 主人公: 誤解ではあるけど、確かにそれも……本当に、そんな武器があるんだろうか バラーム: わたくしたちの調査を信じられないとおっしゃるんですの? プルソン: いっしょうけんめい、がんばったのに! パイモン: 疑うわけじゃないよ。でも、慎重にいきたい ザガン: そうね……もう、ベレトちゃんの悲劇を繰り返すわけにはいかないものね。それこそ、同じ失敗をしていたらベレトちゃんに申し訳ないわ バラーム: それは……ええ、そうですわね (背景切換...) (日が暮れてから、俺たちは魔法王国東海岸に位置する港町に到着した。) (旅の疲れを癒やすためにも、ここで一泊して翌朝から船探しをすることに。) 主人公: ……こういうタイミングでヴィネたちが現れるかと思ったけど バラーム: ふん、そういう浅はかさが、いかにも庶民ですわね バエル: なんですって! 序列1位の私に向かって、何よその言い草! 主人公: この声……バエルとバラーム!? ケンカか!? (聞こえてきた声を頼りに、俺は急いで角を曲がった。) 主人公: バエルさん、バラームさん! 落ち着いて! ケンカはいけません! バエル: ポチ……? バラーム: ご安心くださいませ、ポチさん。ケンカではありませんわ。バエルさんが食べ切れもしないのに、これを 主人公: 肉の串焼き……? バエル: だって1本150ゴールドだけど、10本買うと1,000ゴールドだったから バラーム: 食べ切れもしないのにですわよ。だから、わたくしが手伝ってさしあげようとしたら バエル: 誰があんたなんかに! 主人公: バエルさん…… バエル: ちょうどいいわ。ポチ、あなたにはあげる 主人公: ど、どうも……しかし、おふたりは本当にバチバチですね バエル: この女が序列1位に敬意を払わないからよ バラーム: その言葉、そっくりお返ししますわよ。おちぶれたとはいえ、元貴族でしてよ 主人公: いや、他のメンバーも別に序列とか貴族とかに敬意は払ってないような…… 主人公: って、えっ? 落ちぶれたって、いまは貴族じゃないんですか バラーム: なにか 主人公: い、いえっ。あー、串焼きうめー バラーム: いろいろあるのですわ。それはたぶん、バエルさんも同じこと…… 5000120 - 東の海へ 主人公: いろいろ、ですか バラーム: ええ、そこまで序列にこだわるからには何かあるのでしょう? 具体的にはわたくしも存じ上げませんけれども バエル: まあ、ね。でもそれ、私やバラームだけじゃないと思う。みんな表には出さないけど、多かれ少なかれあると思うわ 主人公: というと……? バラーム: それだけ獣聖騎兵が衝撃的だった、ってことでしてよ。あれが現れてから、人生を狂わされた人は数え切れませんわ バエル: そうね。獣聖騎兵がいなければ、いまの私はいなかった……かな 主人公: ……影響が大きすぎますね、あれは バエル: そう。だからもう、終わりにしないといけないの (背景切換...) ザガン: さあ、ポチちゃん。港はこっちよ~? 主人公: ザガンさん、本当に俺、こっちで良かったんですかね (翌朝。俺はザガンとプルソンについて港を訪れていた。) プルソン: ぽちがいたほうが、なめられない。ぷるもザガンちゃんも、見た目はカレンなびしょーじょだから 主人公: まあ、確かに見た目は…… ザガン: そんなぁ~。それじゃあまるで、中身は可憐な美少女じゃないみたいだわ……ぐすん 主人公: い、いえっ、戦闘とかできちゃうよねって意味で! そんな顔しないでくださいっ プルソン: ぽち、ザガンちゃんなかせた ザガン: なーんてねっ☆ ポチちゃん、早くお船を探しましょ。できるだけ安く借りられるといいわね~ (………………………。) ザガン: ふうっ。これで船も手に入ったし……あとは買い出ししてくれてるみんなが合流するのを待つだけね プルソン: ごはんのざいりょう、いっぱい買ってきてくれるかな 主人公: ザガンさんのお料理、すごいですよね。旅の間の野営で、あんなに美味しい料理を作れるなんて ザガン: あら、嬉しいわ~♪ ポチちゃんがお手伝いしてくれたおかげよ。なでなで~ 主人公: ……っ プルソン: ぽち、なでなでされて赤くなってる。じゃあぼちは、ぷるをなでなでして (撫でて、撫でられて。何をしているんだろう、と思いつつも身を委ねてしまう。) 主人公: 本当に、ザガンさんってお姉さんって感じですね ザガン: だってみんなのおねえさんだもの~ ザガン: こうしてると、弟のことを思い出しちゃうなぁ。よしよ~し 主人公: ああ、弟さんが実際にいるんですね ザガン: ううん、いたの 主人公: ……! ザガン: でももう、微精霊になっちゃった 主人公: す、すみません、俺……! バエル: おまたせーっ。って、あなたたち、何やってるのよ アスモデウス: アスモ様も混ぜろ! ザガン: あはっ、なんでもないのよ~。買い出しは済んだ? パイモン: うん、必要なものは揃った バラーム: 食材も、薬草なんかもあるわ ザガン: うんうん、それじゃあ出発しましょう~♪ (背景切換...) (潮風が頬に吹き付ける。) (船は順調に進んでいた。) パイモン: いい風が吹いてる。これなら予定よりも早く、バイノルドアトラス島に到着できそう アスモデウス: そうすれば、最強の武器がアスモ様を待っているわけだな! 主人公: 武器を手に入れて全てが解決するならいいんだが…… バエル: ――っ!? みんな、あれを見て!! ザガン: あらあら、大変だわ。出迎えが来ちゃったみたいね (バエルの指す方向には、空中に魔法陣のような紋様が浮かび上がり、回転していた。) (そして、魔法陣の中央に黒い空間が亀裂のように発生し、見覚えのある腕がのぞいた。) バラーム: 来ましたわね、獣聖騎兵……! プルソン: うううう……ベレトちゃんのカタキ! うああああああ!! パイモン: っ! プルソン、気をつけて! (プルソンは電光石火、船から飛び出すと獣聖騎兵の肩口に、手にした武器で攻撃する。) (おそらく血液なのだろう、紫色の液体が海面に降り注いだ。) プルソン: あはっ、あはははははははっ……! 血だよっ、血が出てるぅ……! プルソン: もっと! もっと見せて! 血を見せて! (容赦なく叩き込まれる攻撃に、獣聖騎兵は為す術もなく傷ついていく。) 主人公: 武器なんてなくても勝てるじゃないか…… バラーム: 1体だけなら、ですわ アスモデウス: プルソン! やばいっ、アスモ様も行くぞ! プルソン: ――っ! ぷるのこと、ぐちゃぐちゃにできると、思ってるの……? ぐちゃぐちゃになるのは、そっちだよっ!! (新手は3体。うち1体にはプルソンのカウンターが飛ぶが、残り2体の攻撃は――……) ヴィネ: ふう……間に合いましたね ベリアル: ホンマ、相変わらずムチャしよんな、プルはん プルソン: ヴィネ! ベリアル! パイモン: まったく、今までどこで油売ってたんだか ヴィネ: さて、ベリアル。久しぶりに私たちも身体を動かすとしましょうか ベリアル: 見てみぃ。うずうずしとったんやろ ヴィネ: かもしれませんね。では、行きます!! 5000121 - 未来から来たポチ (獣聖騎兵に対抗する武器を求め、魔法王国東海岸からバイノルドアトラス島を目指した一同。) (だが、その途中で襲撃を受ける。) (復讐心からか暴走気味だったプルソンをフォローしたのは――) ヴィネ: ふう……間に合いましたね ベリアル: ホンマ、相変わらずムチャしよんな、プルはん プルソン: ヴィネ! ベリアル! バエル: 気をつけて! 敵の増援だよ! パイモン: みんなも準備して。プルソンを支援するよ 主人公: みんなの身体が、浮いた……!? (突出したプルソンはもちろん、それをフォローしたヴィネとベリアルも宙に浮いた状態で戦っていた。) 主人公: 普段、積極的に使わないってことは負担も大きいってことか ザガン: ふふっ、おねえちゃんにまかせといて♪ タウリ・ルートっ!! バラーム: 敵が怯んだ! 今ですわ!! バエル: この隙に突破する! アスモデウス: よし、アスモ様の出番だな! うおおおぉぉぉっ! プルソン: まだだよ、まだ足りない……っ、もっと、血を見せて……きゃは、きゃははっ、きゃはははははははっ!! パイモン: みんな、攻撃来るよ! (照射されるレーザ―光線のような光。それは海を裂いた。) (もし直撃すればただでは済まないだろう。) ベリアル: なんや、みんな絶好調やな。ほな、ウチらも仕事しとこか。いっくでぇ! ヴィネ: ……? ベレトの姿がないような…… (…………………。) (しばらく戦闘は続いた。だが、怒涛の勢いで攻める彼女たちによって、海面には紫色をした獣聖騎兵の血液が散り、動く相手はいなくなった。) ヴィネ: ふう……ひと段落しましたね バラーム: 一体、どこに行ってたんですの、ふたりとも ベリアル: どうしてもやらんといかんことがあったんや。ま、そんなんはヴィネが説明するやろ ヴィネ: ええ、もちろんです。ただ、その前に伺いたいのですが…… ヴィネ: ベレトさんはどこです? プルソン: ……っ! パイモン: ……。ベレトは、もういない ヴィネ: それってまさか プルソン: うん。微精霊になっちゃったんだ ベリアル: あ、おい、ヴィネ!? しっかりせぇや (足元がふらつき倒れそうになるヴィネを、ベリアルが咄嗟に支える。) 主人公: ショックだよな。当然だ…… バエル: 武器の在り処を見つけて、それを手に入れるために向かうところだった パイモン: あんな……身も凍る雪山のてっぺんで……ベレトは眠ってるんだよ…… ヴィネ: そんな……私が別行動をとって手薄にしたせい……? ザガン: ヴィネちゃんは悪くないわ。わたしたちも、責めるつもりなんてないの ザガン: ただ、何をしようとしていたのか、ちゃんと教えて? ね? ヴィネ: ……もちろんです (バイノルドアトラス島に向けて進む船の上で、ヴィネは口を開いた。) ヴィネ: 私には『未来視』という能力があります。文字通り、未来を見通す力です バラーム: 未来視……!? それ、すごい能力じゃない……? ヴィネ: 私はかつて何度も能力を使いました。もちろん、私たちの未来を占うためです ベリアル: ホンマに獣聖騎兵なんかに勝てる可能性があるんか、っちゅうこっちゃ ヴィネ: 結果は、何度やっても最悪の結果につながってしまう。私たちは全員殺され、誰も助からない―― プルソン: そんなぁ……ぷるたち、みんな死んじゃうの? ヴィネ: 正直、もう限界でした。何度も仲間や自分の死を見なくてはいけないのだから バエル: いくら現実じゃないとは言え、そんなものを見続けたら……。それは当然だよね ヴィネ: これで最後にしよう。そう決めて見たのが、私たちみんなが揃って過ごしていた場面だったんです ヴィネ: そのとき、私たちとともにいたのが―― 主人公: 俺だった、ってことだな バエル: ポチ!? バラーム: まさか、ポチが……わたくしたちが生存するためのカギを握っている、と……? ヴィネ: ポチ、って呼ばれてるんですか……? 主人公: まあ、いろいろあって…… ベリアル: とにかく、ヴィネが見た生き残れる未来には、その兄ちゃんがおったんや。だが問題はここからや バラーム: ……ポチの居場所ですわね。ヴィネにとって縁もゆかりもない男が、どこにいるのかなんてわかるはずない ヴィネ: だから私は何度も能力を使い、そして見つけたのです。このひとは、未来にいました パイモン: は……? 未来……? ヴィネ: ええ。そして、時間を操る私の能力を最大限に活用し、彼を連れてきたんです 5000122 - 沈みゆく島 ベリアル: ふー、やっと着いたわ。しっかし、なんもない島やなぁ バラーム: この島は、もう間もなく沈むと言われていますわ バラーム: ですから、地上でしか生きられない住民は、避難してしまっていますの バエル: 沈んだら沈んだで、誰かが移り住む計画があるって話も聞いたけどね アスモデウス: 海の底に沈むのにか? ザガン: 海の中に住んでいる人たちじゃないかしら ヴィネ: そろそろ、このあたりで野営の準備をしましょうか プルソン: うん、おてつだいするね バラーム: 武器があると言われる祠までは、ここからそう遠くはないはずですわ。きっと明日には着きますわね パイモン: バエル、ちょっと見回りしておこう。大丈夫だろうとは思うけど ベリアル: ほな、つきあうで 主人公: お気をつけて。さて、よいしょっと…… (さっさと野営の準備を始めると、ヴィネが驚いた様子でこちらを見ていた。) ヴィネ: 外から観察していて、なんとなく役割は理解していたけど……本当にあなた、下働きなのね ザガン: ポチちゃん、手際がいいでしょう? いつも助かってるわ。いいこいいこ (ザガンに頭を撫でられ、つい身を委ねてしまう。) (気がつくとヴィネが顔を歪めてこちらを見つめていた。) (はっとしてザガンから身を離す。) ヴィネ: ……いい年して、何やってるんですか バラーム: そこには突っ込んでも仕方ありませんわよ。ザガンさんにダメにされてしまうのは、わたくしたちも同じですし ザガン: ふふっ、バラームちゃんもヴィネちゃんも、おねえさんに甘えていいんだからね? プルソン: ぷるは甘えっぱなしだよ ヴィネ: そんなことを言ってるうちに、もう野営の準備もすっかり仕上がって……手慣れてますね ヴィネ: これまで苦労をかけてしまいましたね。でもそれも、明日で終わりにできるはずです 主人公: でも……明日、手に入るのは武器だよな。それで獣聖騎兵を一撃で倒せたとしても、まだ道のりは長そうだ ザガン: 確かにそうねぇ。神出鬼没な相手だもの バラーム: わたくしたちの移動力には限界がありますわ。ある場所を防衛した翌日に遠く離れた場所に出現されたらお手上げですわね ヴィネ: 私とベリアルはそのことを独自に動いて調べていたんです プルソン: なになに? たのしいお話? ヴィネ: 獣聖騎兵は、獣聖騎兵が作っている、という事実です (背景切換...) ペロー: どうやら、ここですね。なるほど、これは見た目ではわかりませんね (ペローは簡易的な光魔法を使うと、洞窟内へと歩みを進める。) (背景切換...) ペロー: あの獣聖騎兵をも破壊し得るという最強の武器…… ペロー: 誰しもがエルマイトとディマイトを備えるが、その比率は常に不均衡。それを自動的に調整し均衡を取るのがこの武器の真髄だとか ペロー: 手にしたもののディマイトを検知し、エルマイトを同比率まで増幅させる装置を内蔵している……というのがパラケルスス『センセイ』の見解でしたねぇ ペロー: 正直、こちらにも興味が湧かないわけではありませんがしかし、本題は別にありますからねぇ (ペローは、祭壇に祀られた大剣に触れる。) (その柄部分にはくぼみがあった。) ペロー: なるほど。ここに嵌めて使うわけですね ペロー: さて、本題はどちらに……ああ、ここでしたか。美しい輝きですねぇ (武器が飾られた祭壇から少し離れた壁際に、台座に佇む光る石があった。) (そこから強いエネルギーが発せられているように思えて、ペローは慎重に進んだ。) ペロー: これがエルマイト増幅装置となるヴェルザーム…… (ペローは輝く宝珠を手に取る。) (特段、変化は見られなかったがペローは目を細める。) ペロー: 素晴らしい…… ペロー: さて……この使い道はさておき、まずは混沌と絶望をプレゼントするとしますか (ペローは懐から、形のよく似た石を取り出すと、もともとあった石とそっくり入れ替えた。) (ペローが持参した石は、緑色に輝いていた。) ペロー: 私の手土産として一役かっていただきますよ。ふふっ…… (背景切換...) パイモン: 獣聖騎兵が、獣聖騎兵を作っている……!? ヴィネ: ええ、そのとおりです バラーム: まず、あれは生き物ではなく作られた存在なのですね 主人公: だとすれば、作っている場所を制圧さえできれば、少なくともこれ以上、増えることはない……? ベリアル: そういうこっちゃ。場所もだいたい突き止めてあるで ヴィネ: ただ問題は、作っている獣聖騎兵がおそらく最も強いと思われることです ベリアル: 親玉みたいなんが、定期的に獣聖騎兵を吐き出しとるんや。でも、そいつも例の武器があれば…… 主人公: ああ、そういうことか……。作るというか、女王蜂が産卵しているようなイメージなんだな 主人公: てっきり工場でもあって生産ラインがあるのかと思ったけど、違うみたいだ バエル: ただ……まだ見たこともない武器に、そこまで期待してもいいのか疑問だけど バラーム: わたくしたちが探し出した武器が、役に立たないとおっしゃるのかしら バエル: そうは言ってないでしょ。でも、並の獣聖騎兵ならまだしも、そんな親玉に通用するのかなってこと ザガン: 通用するとまったく疑わないのは危険だけど、他に手立てがないのも事実よ? バエル: まあね……。ベレトのことがあって、ちょっと弱気になってるのかも バラーム: ……。ふん、バエルさんらしくありませんわね バラーム: 弱気なあなたに代わって、わたくしが武器を振るってさしあげますわ! 主人公: あ、あの……戦いのことなんですけど、ちょっと俺に考えがあるんですが…… 5000123 - 精霊という選択 レグルス: はぁっ、ふぅっ……お疲れ様です、デュプリ・ライブラ。もう結構です デュプリ・ライブラ: はぁはぁ……満足してもらえたッスか? レグルス: ええ。おかげで身体だけでなく気持ちも少し楽になった気がします。ありがとう、デュプリ・ライブラ デュプリ・ライブラ: 神官長……! ありがとうなんて、えへへ……。言ってもらえるの、久しぶりッスね。最近ボク、あんまりお役に立ててなかったから (デュプリ・ライブラの笑顔に目もくれず、レグルスは窓辺に立ち陽光に目を細める。) レグルス: さすがに汗をかいてしまいましたね デュプリ・ライブラ: 血の巡りが良くなると体温が上がるんスよね。実はボクもだいぶ汗かいちゃいました レグルス: 床の掃除はおまかせしますね デュプリ・ライブラ: 了解ッス! あ、あと、お風呂も準備しますね。お背中、流しちゃうッスよ レグルス: ……そうですね。お願いします (デュプリ・ライブラのほうへ向き直ったレグルスは、そっと彼女の頬に手のひらを当てる。) デュプリ・ライブラ: えっと、神官長……っ? レグルス: 中身はアレでも見た目はあの人そっくり……。置いていくのは忍びない…… レグルス: デュプリ・ライブラ。これからあなたに役割を与えます デュプリ・ライブラ: は、はいっ、お風呂の準備とは別にってことッスよね! レグルス: あなたはこのオトギノクニに存在する精霊の管理者となるのです デュプリ・ライブラ: 精霊、ッスか レグルス: 獣聖騎兵の働きによって高位ディマイト保有者の連中は、軒並み微精霊となっています レグルス: イマジュマイトの流入はここでコントロールしていますが、しかし100%ではありません。通り抜けるものもいくらかあります レグルス: つまり、いつかは復活する可能性があるのです デュプリ・ライブラ: えっ、せっかくディマイト浄化作戦やってるのに、復活しちゃうんスか? ていうか、微精霊になってるんスか? レグルス: 獣聖騎兵によるディマイト浄化を行った場合、対象は器を失い精霊化します。これに関しては原則、不可逆とされています デュプリ・ライブラ: ふかぎゃ、え、なんスか? レグルス: 精霊になったものが器を取り戻すことはない、という意味です デュプリ・ライブラ: なるほど。でも復活しちゃうんスか? よくわかんないッス レグルス: ディマイトを浄化したところで存在が消滅するわけではありません。微精霊となってもディマイトを貯めることは可能です レグルス: そこらを漂っている本当の微精霊と違うのは、貯めれば上位精霊にまでなれることなのです デュプリ・ライブラ: あー、器はなくても精霊として強くなっちゃうんスね。それを押さえつけられるようにボクがなんとかするんスか レグルス: その通りです。管理体制を整えておけば、いざというときに対応できます レグルス: けど……それでも、浄化された連中が報復に来る可能性は否めません……。となれば、それに備えておかなくては…… デュプリ・ライブラ: 了解ッス。なんかすごそうなお仕事で、ボクうれしいッス。神官長の期待の表れですもんね レグルス: 精霊になることで、実はメリットもあるのです レグルス: 世界への影響力が弱まる代わりに、ダメージを受けずに済むというものです。もし報復されたとき、万一がないように保険をかけておきましょう デュプリ・ライブラ: 神官長のお話は難しいッス。どうするんスか? レグルス: 浄化とは異なり、保有イマジュマイトを損耗することなく肉体を切り離す秘術……これを使えば自らを精霊化できる レグルス: 獣聖騎兵がどのような方法で浄化しているかわからない以上、ワタシに使うのは避けたい。となれば、この秘術しかないのだけど…… レグルス: ライブラの残したメモだけで構築して問題ないかどうか……やはり、ワタシの前にまず、この子で1回…… デュプリ・ライブラ: 神官長? レグルス: デュプリ・ライブラ。あなたはワタシと永遠を生きるつもりはありますか? (背景切換...) パイモン: 考え? 戦いのことは素人なんじゃないの 主人公: それはそうなんですが、見ていてちょっと気になったことがあって バエル: 言ってみなさいよ。この序列1位の私が聞く価値がある話なんでしょうね? 主人公: 皆さん、チームなのにそれぞれがバラバラに動きすぎているような…… アスモデウス: む……? みんながそれぞれ戦ってるんだから、当たり前だろ? ポチはなに言ってるんだ? 主人公: もっと連係した動きをやってみませんか。せっかく、これだけの人数がいるんですから、組織的に動けたら強いはずです アスモデウス: それってどんなのだ? アスモ様にわかるように説明してみろ プルソン: でも、ちょっと言いたいことはわかるかも。飛び出ちゃったこと、よくないなって……ぷるも自分で思ってたの 主人公: ええ、まさにそれです。例えば、プルソンさんが飛び出たなら、長距離支援だけじゃなくて何人か併走したほうがいいです ザガン: なるほどねぇ。飛び出さないに越したことはないけど 主人公: 大事なのはお互いの距離感です。攻撃直後はどうしても無防備になります。プルソンさんに攻撃したときバエルさんの射程内だったら…… バエル: プルソンを囮に使うってわけ? そんな危険なことできないわ 主人公: いえ、牽制なんです。獣聖騎兵は見たところ、かなり知能は高い。プルソンさんに攻撃すればバエルさんにやられる、と予測して攻撃自体を躊躇するのではないかと パイモン: そこまで知能が高いかは議論の余地がある。でも、作戦は悪くないと思う バラーム: そうですわね。離れすぎないように、プルソンさんも意識するんですよ プルソン: そうだよね。きをつける ヴィネ: わざわざ攻撃を誘うわけではないのなら、今の例でプルソンさんの危険が増すわけではありませんからね。今まで通りです バエル: なるほどね。なら、いいんじゃないの。とりあえずやってみれば ベリアル: 大したもんやなぁ。兄ちゃん、そんなこと考えてたんや 主人公: ベレトさんのときから、ずっと……考え続けていたからな…… 5000124 - 伝説の武器 バラーム: では次は、2体の敵を同時に相手するパターンですわね 主人公: 3人で三角形を作るように位置取りしてください。このとき、誰がどれを攻撃するかを隠して混乱させたいんです アスモデウス: うん、アスモ様はここからどうすればいい 主人公: 敵がこう配置されていたら、アスモ様はここを走り抜けてください アスモデウス: 攻撃しないのか? 主人公: ほぼ同時に入れ替わるようにしてプルソンさんが左側を、すれ違った瞬間にバラームさんが右側を攻撃しましょう アスモデウス: なんだ、なんだ! アスモ様も攻撃したいぞ! バラーム: そのつもりで走るのですわ。でないと相手が騙されませんから 主人公: あくまで基本の動きってことで、実際には戦いながら臨機応変にやっていきましょう アスモデウス: むう……しょうがないな ヴィネ: すごい……すごいですね、人間さん 主人公: いや、そんな大げさなものじゃないんだよ ヴィネ: 作戦そのものというより、みんなが聞き入れてくれてることが、すごいですよ……! パイモン: え、そう? 意見があるっていうんだから、普通は聞くんじゃないの ヴィネ: だって、これって信頼を得ているってことですよ。私、最初に人間さんにみんなの信頼を得るようにって言いましたけど ベリアル: 無茶振りやな、って言うてたもんな。そらそうやで、あんなどこの馬の骨ともわからん状態で始めたら 主人公: ふたりとも無茶振りだって自覚あったのかよ! 大変だったんだぞ! 主人公: でも実際、あの場はヴィネのお墨付きがあったから、みんなも耳を傾けてくれたんだと思うけどな ヴィネ: そうなんでしょうか……。私はまだ、自分の判断が間違っていたんじゃないかと不安で 主人公: みんな、ヴィネが見えないところでがんばってきたことは分かってるよ。もちろん、俺も ヴィネ: はい……! (背景切換...) ベリアル: ここが武器が置いてあるっちゅう祠なんか? あっけなく着いたなぁ ザガン: みんな、油断しないようにね~。洞窟の中も何がいるかわからないわよ~ (背景切換...) ヴィネ: これが……獣聖騎兵を倒せるかもしれない武器…… アスモデウス: なあ、武器の名前はついてないのか? なんちゃらソードとか、なんとかブレードみたいな、かっこいいやつ プルソン: みんなでしらべたけど、名前はなかったの ザガン: 文献にも、強力な武器が……としか書いてなかったのよね バエル: じゃあ、私の名前でもつける? バエルソードって感じで バラーム: ダッサ!! バエル: なんなの!? バラーム: だいたいバエルさん、使えるかどうかわからないって弱気になっていたじゃありませんの!? ここはわたくしにお任せあれ バエル: ちょっと心配しただけでしょ! 美味しいところ持っていこうとするんじゃないっ! パイモン: はいはい。またいつものね プルソン: ぷるだって武器、つかってみたいのに アスモデウス: あいつらに任せておけばいいんだぞ。どうせ武器は1つだし、トドメを刺すのに使うくらいで、ある程度弱らせるまでは全員で戦うことになるんだ ヴィネ: それは確かにその通りですね ベリアル: なあ、ここに何か嵌めるんとちゃうか? (ベリアルが長剣の柄の部分を示す。確かに何かがはまりそうだ。) パイモン: それって、これじゃないかな。こっちに緑色の石がある バラーム: では、嵌めてみましょう (石は測ったようにぴったりと柄に収まる。途端に、ヴン……と鈍い音がして、石の輝きが強まった。) アスモデウス: おお……かっこいいな。やっぱりほしいぞ…… プルソン: まかせるって、さっき言ったばっかりなのに 主人公: ん……? この石、なにか引っかかるような…… バラーム: ……っ、くっ、ううっ、何かがわたくしの中に流れ込んでくるような…… ザガン: バラームちゃん、大丈夫? 無理しちゃダメよ バラーム: 大丈夫ですわ。ちょっと立ちくらみしただけですから…… (背景切換...) ベリアル: ほな、いよいよ決戦やな。ここからまた海渡って、北のほうに行くで プルソン: また船ー? ぷる、きもちわるくなっちゃうから、やだな パイモン: ……っ! 気をつけて、来るよ! ヴィネ: 獣聖騎兵です! 皆さん、構えて! バラーム: 新しい武器のお披露目会ですわね! 参りましてよ! 主人公: 数は1、2……4体か。ちょっと多いが、いまのみんななら新武器がなくても難なく対応できるはず プルソン: いっくよぉっ、もっとぷるに、血を見せてっ! ほらっ、ほらぁっ、ぷるのこと、楽しませてよぉっ! アスモデウス: そこだあああぁぁっ! でやああぁぁっ! 主人公: 相変わらず前衛は元気だ。プルソンから狂気がにじみ出てるのも、最近はもう慣れた バラーム: はぁっ、はぁっ、あああぁぁ……っ!! 主人公: 新武器の威力も申し分なさそうだ。ただ、少し消耗しているように見えるが…… バエル: よし、チャンス! バラーム!! バラーム: く、はぁっ……うう、ううううっ……うあああぁぁぁあああぁぁぁっ!? ヴィネ: !? ザガン: バラームちゃん! パイモン: なっ……あれ、どうなってるの……? バラームの武器から、あれは……触手……? (長剣の柄あたりから黒い触手のようなものが現れ、バラームの身体を絡め取っていく。その様子はさながら……。) バエル: 武器と一体化している……!? ヴィネ: 急いで武器と切り離します! ベリアル: 援護するで! バラーム: うああぁぁあああぁぁっ!! ヴィネ: あああぁっ!! 主人公: ヴィネ!! (すさまじいパワーで、長剣で横殴りするかのように振り払うバラーム。) ヴィネ: ……手加減して戦えるような相手じゃありません。怪我をさせてしまうかもしれませんが、全力でいかないと プルソン: そんな……だって、仲間……なのに…… ザガン: 長引いて良いことなんてひとつもないわ。できるだけ早く止めて、武器から切り離してあげないと……! バエル: バラーム……あなた、何やってんの……! 5000125 - 宿敵の役目 (バラームに異変が起きてから、どれくらい時間が経っただろうか) (みんな懸命に戦うが、まるで歯が立たない。このままではバラームを止めるどころか、この場で全員がなぶり殺されてしまう。) ベリアル: なあ、あの武器はなんなん? 情報はないんか ザガン: 調べたところだとね……イマジュマイトは2種類あるの。あの武器は、わたしたち魔族とは真逆の性質を持っているんですって ベリアル: ほな、真逆やから暴走してもうたんと違うんか? ザガン: いいえ。逆だからこそ均衡が取れて、エネルギーが歪まずに増幅される……資料にはそう書いてあったわ 主人公: その話……エルマイトとディマイトのことだよな……。真逆の力で均衡を取るのは確かに世界そのものの理屈だけど…… 主人公: 個人と武器単体にもその理屈が通用するのか? でも、おそらく魔族のみんなが使っているのはディマイト……更にディマイトを重ねたら危険っていうのもわかる…… バエル: なにやってんの! 目を覚ましなよ! バエル: いつも、私のことあーだこーだ文句言ってるくせにっ、みんなに迷惑かけてんのはあなたじゃないの……っ! パイモン: バエル…… バラーム: はぁっ、くっ、くふぅっ……うううあああぁぁっ! バエル: い、いい加減に……っ、ぐっ、うああああっ!? (必死に食い下がり挑発的な言葉を投げかけるバエル。おそらく、本来のバラームの意識を取り戻そうとしているのだろう。) 主人公: ……待てよ。増幅……バランス……そうか、あの石は……ヴェルザーム……!? 主人公: 皆さん、あの石です! あの石を外せば正気に戻るかも ザガン: あんな小さなもの、間合いに入らせてももらえないのに、どうやって…… パイモン: ……狙ってみせる ヴィネ: 私もやってみます! (可能性があるとすれば魔法攻撃だけだ。物理攻撃で狙うのはまず不可能だろう。) バエル: バラーム! いい加減、目を覚ましなさいよ! そんなわけわかんないものに、いいようにされるなんて……あなたらしくないじゃない! バラーム: ……っ……ぁうっ…… (うめき声のような声をあげるバラーム。目は虚ろだ。) 主人公: ディマイト汚染と同じ状態……いや、もっとひどいかもしれない (巻き付いた触手状の何かが、彼女の頭に巻き付いて耳元も覆っている。もしかすると耳から内部に……そこまで考えて、吐き気を催す。) ザガン: ポチちゃん、大丈夫……? 主人公: すみません、大丈夫です。ただ……あれを見て、もうバラームさんは…… ベリアル: ……ウチもそれは考えとったわ。もう、戻せないんちゃうかと…… バラーム: うあああああああ!! バエル: くっ……聞きなさいよっ、バラームっ! (虚ろだった目に力が戻り、また強烈な攻撃を仕掛ける。バエルはさばくので精一杯になってしまう。) バエル: もう、戻れないっていうんなら……私が引導を渡すしかないじゃない……! 早く戻ってきなさいよ、私なんかにやられていいわけ!? バエル: でも……逆なら、私もあなたに始末をつけてほしいわ (バエルの目元が光った気がした。) (その瞬間、雷撃がバラームを直撃した。同時に、柄に嵌まっていた秘石が外れ、はるか向こうへ放物線を描いて消えていく。) ヴィネ: 当たりました! パイモン: いまだよ、バエル! バエル: バラームぅううううっ!! (バエルの刃がバラームを貫く。雷撃の衝撃か、その瞬間にバラームは棒立ちになっていた。) バラーム: バエ……ル……さん…… (崩れ落ちるバラームの身体。) (誰もがその場を動けない中、バエルの慟哭がこだました。) 5000126 - 血に濡れた武器 (極寒の大地に降り立った俺たちは、目標地点を目指して無言で進んでいた。) プルソン: バラームちゃん…… (沈黙を破ったのはプルソンだった。) プルソン: バラームちゃんは、どうしてあんなことになっちゃったの? バエル: ……そんなの、わからないよ パイモン: 武器を持ったから。たぶんそれだけなんだ パイモン: 逆に言うと、私たちのうちの誰がバラームみたいな状態になってもおかしくなかった ベリアル: せやな。バラームは何も間違ったことはしとらんかった アスモデウス: 武器がいけなかったのか? じゃあ、やっぱり捨ててきたほうが良かったんじゃ 主人公: いえ……これは絶対に必要になるものです ザガン: ポチちゃん、必死で止めてくれたものねぇ バエル: そうね…… (背景切換...) (それは遡ること半日――) (バラームの遺体を丁重に埋葬した後のことだった。) (彼女の身に一体何が起こったのか……必然的に、その話題が上がった。) ザガン: この武器はたぶん、力のバランスを取ることで、偏りという不純物を取り除いてエネルギーを最大化するのよ アスモデウス: ……ザガン、アスモ様はよくわからなかった ヴィネ: それってもしかして……イマジュマイトには2種類ある、っていう例の話ですか……? ヴィネ: 実は2種類あるイマジュマイトは、この世界には同じだけ存在してバランスが取れてるんだって説があるんですよね 主人公: この時代ではまだ、その2種類が広く認知されていない……? だからエルマイトの話をしても反応が鈍かったのか パイモン: 2つが拮抗しているのが世界の理だとするなら、より均衡がとれたほうがエネルギー効率がいい……。この武器は、私たちの力を読み取っているのか ザガン: さっきの戦いの最中に、柄にはまっていた玉のようなものが弾けて、どこか飛んでいったでしょう? (戦いの末に、武器がバラームの手から離れた瞬間。) (玉が飛んでいってしまったのは、確かに全員が目撃していた。) パイモン: あの玉が、バランスを取る役割をしていたのかも ザガン: おねえさんはそう考えてるの~。どうかしら アスモデウス: う、うむ……でも、武器はもう壊れてしまったし、どうしようもないんだろ ヴィネ: いえ。この武器の素材はおそらく、エネルギー伝達を高めるためのもの。玉が失われても、これを使う意味はあります 主人公: あの玉、もしかしてヴェルザーム……? だとしたらフアナから聞いた『ブースターとしての使い方』をしているってことか 主人公: フアナによれば、ペローがディマイトを増幅する効果のためにヴェルザームを使ったんだとか。だとすれば 主人公: みんなは魔族だし、俺のエルマイトが使えなかったことからも、おそらく持っているのはディマイト……! それをエルマイトのブースターで均衡をとる、そういう武器なんだ ベリアル: どないしたんや、兄ちゃん。さっきから難しい顔して考え込んで 主人公: いや……もしかしたらだけど…… プルソン: じゃあ、ヴィネのいうとおり、これつかってたたかう? バエル: ……こんなもの ザガン: バエルちゃん? バエル: こんなもの! バラームがあんなことになったのは、全部その武器のせいでしょう! なのに、それを使って戦えるはずがない! ヴィネ: バエルさん……でもこれは…… バエル: こんなもの……っ (バエルが伝説の武器を地面に無造作に転がす。そして、自らの武器を手に取った。) 主人公: 待て! プルソン: ぽち! バエル: ……っ!? ポチ、何のつもりよ (俺は咄嗟に、武器を庇うようにバエルの前に立っていた。一歩間違えれば、自分が攻撃される間合いだ。) 主人公: バエルさん、壊そうとしてましたよね バエル: だって、こんなもの…… 主人公: これはバラームさんが遺してくれたものなんですよ!? バエル: ――っ! アスモデウス: うん……ポチの言うとおりだ。これはバラームの形見みたいなものだろ。使えないのはともかく、壊しちゃだめだ バエル: でも、バラームを奪ったのもこいつなんだよ……! ヴィネ: バエルさん。ここまで私たちが来た意味、覚えていますか。少しでも、成功する確率を上げたい、そのために使えるものは何でも使う…… ヴィネ: それがバラームさんに報いるってことだと思うんです バエル: ………… 5000127 - エルマイトとディマイト レグルス: これで……ワタシたちふたり、精霊化を果たすことができました。精霊としての本体は、氷魔法で凍結させた自らの肉体…… レグルス: 原則、神殿から長期間にわたって移動することはできませんが、これからのワタシたちの仕事を考えれば問題ないでしょう デュプリ・ライブラ: なんか……変な感じッスね…… レグルス: 身体におかしなところはありませんか? まだ、精霊状態で行動することに慣れないかもしれませんから、無理はしないように レグルス: 身の回りの世話も、最低限のことは自分でできますから。数日、横になっていても構いませんからね デュプリ・ライブラ: 神官長、優しい…… レグルス: えっ? デュプリ・ライブラ: えへへ、なんか大事にされてるって感じがして嬉しいッス レグルス: 調子が狂いますね……。これだけ、あの人にそっくりなんですから、優しくしてしまうのは当然じゃありませんか デュプリ・ライブラ: でもボク、平気ッスよ。それに、これで神官長とボクは永遠に一緒なんスよね? レグルス: ああ……まあ、そう言えますね。もう万一のことを考えなくてもいいんです。本体を見つけ出さない限り、ワタシたちは決定的なダメージは負わず、活動が可能です デュプリ・ライブラ: えへへ……なんだかドキドキするッス ペロー: おや、おふたりお揃いで レグルス: ああ、ペロー。戻ったのですね ペロー: すべてうまくいきました。獣聖騎兵を脅かす武器に付随するヴェルザーム、入れ替えてまいりましたよ デュプリ・ライブラ: なんのことッスか? ヴェルザーム? レグルス: ヴェルザームが7つあることは、あなたも知っていますね? デュプリ・ライブラ デュプリ・ライブラ: もちろんッス ペロー: エルマイトを増幅するものが3つ、ディマイトを増幅するのが3つ、そして6つを繋ぎコントロールするためのバランサーが1つ…… ペロー: 武器に付随していたのはエルマイト増幅型でした。そこで神殿に保管されていたディマイト増幅型と入れ替えておいたのです。これで武器は機能しないでしょう デュプリ・ライブラ: うんともすんとも言わないってことッスか? ペロー: 無理に使用したときにどうなるのかは、私も把握していませんが……少なくとも獣聖騎兵を倒すには至らないはず レグルス: 到達したのは一部の高位魔族だとか。ディマイト保有量は多いでしょうから、それを基準にエルマイトを引き上げられたら……危ないところでしたね ペロー: これが現地にあったエルマイト増幅型です レグルス: デュプリ・ライブラ。それを保管庫に デュプリ・ライブラ: 了解ッス。ふうん、これがヴェルザーム…… (背景切換...) (冷たい大地を真っ直ぐ進む。) (まだ吹雪いてはおらず、気温は低いが穏やかな天候だった。) (しかし、状況は穏やかとはいえない。) (出現した獣聖騎兵に、練習通りにフォーメーションを組んで対抗するが……。) ベリアル: ちっ、数は大したことあらへんが、やったら固いんはなんなんや バエル: こんなところで苦戦してるようじゃ、親玉なんか倒せないのに……! ヴィネ: 皆さん、一旦下がって間合いを取りましょう。ザガンさん、援護をお願いします! (間合いをとって睨み合ったところで、俺は思い切って口を開いた。) 主人公: あの……試したいことがあるんです パイモン: なに? ポチも空気は読めるからわかってると思うけど、くだらないことやってる場合じゃないからね 主人公: 2種類のイマジュマイト……皆さんが持っているものと、俺が持ってるのは真逆だと思うんです バエル: 急に何を言い出すかと思えば、何よそれ アスモデウス: 真逆っていうか、ポチはよわよわなんだろ パイモン: いや……続けて 主人公: 以前、ベレトさんに俺の力を使おうとしたとき、逆効果でしたよね。あれは真逆のものだったからなんです アスモデウス: 確かに、そんなことあったな パイモン: ベレトも、何かを感じてはいたみたいだった。確かにポチは何か持ってるんだと思う 主人公: 性質が真逆だからうまくいかなかった。でも、2種類のバランスを取るなら活かせるんじゃないでしょうか ベリアル: 具体的にどうするつもりなん? 主人公: 武器を持つとき、俺も一緒に持ちます。玉の役割を俺が担当するんです ザガン: そんなの、うまくいくかしら ヴィネ: ……可能性があるなら、試してみましょう ザガン: ちょっとヴィネちゃん、大丈夫? (覚悟を決めた表情でヴィネが前に進み出る。) (もしかすると未来視で、俺が何らかエルマイトを持っている場面を見ていたのかもしれないが。) ヴィネ: こう……で、いいんでしょうか。ふたりでひとつの武器を持つって、初めてなのでよくわかりませんが…… 主人公: 俺は素人だから、手を添えるだけにしておく。武器としてはヴィネが扱うってことでいいと思うんだ ヴィネ: わかりました。……優しくしてくださいね 5000128 - ポチの真価 (ヴィネとふたりで武器を振るう。) (日頃から訓練していたおかげで、まったく身体がついていかないということはない。) (そして、肝心の武器の効果は――) ヴィネ: なにこれ……ひとりで戦ってるときと、まるで違う……! バエル: うそ……でしょ……? ベリアル: 傍で見とっても、今までとまるで違うで。これ、ほんまにいけるんちゃうか パイモン: ポチに、こんな力があったなんて ザガン: ヴィネちゃん、右手に敵影、ちょっと固そうだから気をつけて! ヴィネ: 了解ですっ! はあああぁぁああぁっ! プルソン: 一撃……! 主人公: かなり優勢に持ち込めたな。ヴィネ、ここでちょっと交代してみよう ヴィネ: え、交代? 主人公: 今度はベリアル、来てくれ! ベリアル: へ? ウチかいな 主人公: うまくいくことはわかったんだ。あとはみんなと合わせていきたい ベリアル: 確かに、ヴィネひとりだけ使えるよりは、全員が使えたほうがええわな。ええで、いこか (ヴィネからベリアルに交代し、彼女が武器に触れると――) (武器は形態を変えた。) アスモデウス: なんだ、形が変わったぞ パイモン: あれは使用者に合わせて形状が変わるの……? ベリアルが普段から使い慣れてる形になってる ベリアル: よっしゃ、これやったら使い勝手もええな。兄ちゃん、やったるで! (…………………………。) (出現した獣聖騎兵を殲滅したところで、ようやく一息つけた。) (かなり強力な攻撃ができるおかげで、時間が短縮できているのはありがたい。) ヴィネ: すごいです、人間さん……! プルソン: ぽち、つよかった。がんばったね。いいこ、いいこ アスモデウス: さすがアスモ様のペットだ、いっしょに戦えるのすごくいい! バエル: ポチ……あなたに、こんな力があったなんてね……。ううん、ポチなんて呼んじゃだめだよね。認めるしかないもん、立派な仲間なんだって 主人公: ポチでも構いませんよ。最初は引いたけど、今となっては愛着もあるし ベリアル: 引いとったんかい。ってまあ、ウチは名付けに関係あらへんけど パイモン: それより、ポチ 主人公: あ、はい バエル: あくまでもパイモンはわが道を行くわね…… パイモン: ポチががんばってるのはわかるけど、負荷が集中しすぎてると思う ザガン: うん、それは気になったわ。かなり鍛えてるのかな、とは思ったけど 主人公: スカーサハに……知り合いの武術の達人に、稽古をつけてもらうことがちょくちょくあって、その成果だと思う (どこで役に立つかわからない。本当にやっていてよかった。) パイモン: ポチは動かないで、待ってて。私たちがポチに近づいて武器を使っていく バエル: そうだね。それに防御力はやっぱり一般市民だから、前衛と2列目はポチに攻撃を通されないようにコースを切ってあげないと危ないよ ヴィネ: そうですね。わかりました、ではそのフォーメーションを確認しながら、備えておきましょう プルソン: そなえる……そうだよね、もうすぐなんだよね ザガン: ええ……大一番ね (…………………………。) (背景切換...) アスモデウス: おっ! みんな、見てみろ! 海だぞ! ヴィネ: ちょっとあったかいと思ってましたけど、ここは少し気候が穏やかなんですね バエル: 目的地までの距離は……。うん、日も沈んできたし、ここで野営にしましょうか パイモン: おそらく、この野営が最後の休息になる。みんな、身体をしっかり休めて プルソン: いよいよなの? ぷる、きんちょうしてきた。おしっこもれそう ベリアル: 海にじゃーって流したらええやん アスモデウス: やめろっ、後で泳ごうと思ってるんだぞっ! バエル: パイモンがいま、身体を休めろって言ったでしょ! なんで泳ぐのよ! ヴィネ: 気温は少しあったかいですけど、水温はすごく冷たいと思いますし ザガン: ふふっ、みんな緊張してるみたいね~。ポチちゃんも、あのくだらないやり取りに加わったら? 気が紛れるわよ~ 主人公: はは、そうします (これが8人で過ごす最後の夜――) (泣いても笑っても、もうこの瞬間は戻ってこないんだろう。) (すべてうまくいったとしても、俺は未来に帰らなくてはならない。) (彼女たちに別れを告げなければならないのだから――) 5000129 - 獣聖騎兵・オリジン バエル: 見て。太陽が (気がつくと、みんなで沈みゆく太陽を見つめていた。) (いままさに、水平線に姿を隠そうという瞬間。) ヴィネ: また、見られますよね。全員で (それは誰の声かは明らかだった。すぐ隣に座っていたから。) (手を握ると、彼女は驚いた様子だったが、すぐに握り返してきた。) 主人公: 次に見るのは夕日じゃない。夜明けだ ヴィネ: ええ、そうですよね。長い長い夜が明けて、やっと私たちみんなが平和な朝を迎えられるように ベリアル: せやな。ほな、約束しようや。みんなで今度は、朝日を見るんや パイモン: 約束…… バエル: そうね、この場にいる全員で プルソン: ベレトちゃんも、バラームちゃんもいっしょにだよ バエル: ……! うん、そうね (もう誰も、失いたくない。) (そんな決意を込めて。強く、しっかりと、指を絡めて。) (出会ったときは、こんなにも存在が大きくなるなんて、予想もしていなかったのに――) バエル: 大丈夫だよね。もう誰もいなくなったりしない。全部、うまくいく……そうだよね パイモン: 大丈夫。やるだけのことはやってきた プルソン: あーっ! (急に声を上げるプルソン。彼女は俺とヴィネが繋いだ手を指さしていた。) (あっと思ったときにはとき既に遅し。) プルソン: ぽちと、ヴィネちゃんが、イチャイチャしてた! ヴィネ: い、イチャイチャなんて! ザガン: おねえさんは怪しいと思ってたのよ~。ポチちゃん、ヴィネちゃんのことだけ呼び捨てでしょぉ? 主人公: いや、ベリアルのこともですよ! バエル: ふうん、そうなんだ。ふうん……! パイモン: まったく、リーダーとしての自覚が足りないんじゃないの ヴィネ: え、リーダー? 私が、ですか? パイモン: ………… ベリアル: 足りないどころか、無かったみたいやで バエル: 最初に全員が集まったときに、そういう話になってたじゃないの アスモデウス: アスモ様の優秀な副官としてリーダーに任命されたんだぞ ザガン: まあでも、いま思い出してみると、ちゃんと結論付けないでふわふわして終わったような気がするわねぇ~ ヴィネ: そ、そうだったんですか……! なのに私ってば、勝手に別行動したりして、なんかすみません…… プルソン: ヴィネちゃん、どんまい バエル: 別行動なんかは、責任感から行動してるものだとばかり思ってたんだけど。ま、結果オーライってことでいいんじゃないの ヴィネ: だ、だって、私なんか何の取り柄もないんですよ! 変わった能力もないし、カリスマみたいなものもないし、どっちかっていうと地味で、コツコツやるのが性に合うし ザガン: だから、じゃないかしら ザガン: これだけ個性的なメンバーが揃ってるから、まとめられるのはヴィネちゃんみたいに協調性のある人じゃないと プルソン: まちがいない。ぷるは、きょちょせい、ないから アスモデウス: まず言えてないぞ、協調性 ヴィネ: じゃ、じゃあ……頑張らせていただきます! リーダーとして責任と自覚を持って……必ず、皆さん全員無事で、獣聖騎兵を倒しましょう! (背景切換...) (目的地に近づくにつれ、雪は深くなっていく。) (道も険しく、進むだけで消耗していった。) ベリアル: 今朝まで、あんなええ感じの海におったとは思えんわ……。しんどすぎるやろ、これ 主人公: そういえばベレトさんと話してたんですよ。南国リゾートに行きたいですねって プルソン: なんごく、りぞーと? 主人公: 南の暖かい島で、海で遊んだりフルーツジュースを飲んだり、という楽しくまったりできる場所です プルソン: なにそれ、いきたい アスモデウス: アスモ様をお連れするんだぞ、ポチ 主人公: もちろんです。おまかせください パイモン: ――しっ。静かに。向こう、何かいる ヴィネ: あれは……! (雪深い谷に隠れるようにして、それは佇んでいた。) (俺たちがよく知る獣聖騎兵、その亜種であることは疑いようがなかった。) (だが大きさは従来の獣聖騎兵を上回り、細かな部分も若干違う。) (そして見た目以上に俺たちにインパクトを与えたのは――) ベリアル: なんやて……! 獣聖騎兵から、獣聖騎兵が出てきとる…… (その亜種の腹部から、一定時間が経つと獣聖騎兵の身体の一部が、ごろり、と転がり出てくる。) (そして、その場で身体が組み上げられていった。) パイモン: 獣聖騎兵を生み出している……! ザガン: 自身のコピーを生み出している、ということかしら。おぞましい光景ね バエル: さしずめ、獣聖騎兵・オリジンといったところかしら。あいつを倒さないと、完全にいたちごっこになるわよ 主人公: 逆を返せば、そのオリジンとやらを倒せばすべて解決するかもしれない ヴィネ: 向こうはまだ気付いていません。とは言え、最初の一撃で仕留めることは困難。破壊工作をするような準備もありません ヴィネ: ほぼ正面からの打ち合いになる可能性があり、通常の獣聖騎兵もかなりの数がいます。間違いなく過酷な戦いになるでしょう ヴィネ: でも、勝ちます。勝てます。私たちなら、必ず バエル: 望むところ。私はヴィネを信じてるから ヴィネ: 私を? バエル: 見たんでしょ、未来を。私たちが無事に過ごしているところ ヴィネ: ……はい! ベリアル: ほな、いっちょ暴れたろか! 5000130 - 明けない夜はない パイモン: アスモ、下がりすぎなくていい、前線で張って雑魚食い止めて! ザガン: もう一度押し上げるわ、おねえさんが援護でオリジンの懐に空間を作るから、そこに入るのよ! ベリアル: ウチが囮で斜めに走るさかい、ヴィネと兄ちゃんは交差して入り込むんや! ヴィネ: わかりました! 人間さん、お願いします! 主人公: いけえええっ!! (手応えは十分。だが、獣聖騎兵・オリジンはまだ倒れない。) (想像以上のタフさ、機動性は低いが射出する通常の獣聖騎兵がカバーする。) ベリアル: くっ、あかんっ! 縦にノーマルが突破しかけてきよった! ザガン、避けてや! ザガン: きゃあああああぁぁっ!? パイモン: くっ、陣形が間延びしてるっ……アスモ、一旦こっちに……ぐうっ、うああああっ!? (こちらも攻撃を積み重ねているが、一方で相手の攻撃も確実に、こちらのダメージとなっていた。) ヴィネ: 皆さん……っ! プルソン: う、うう……ぷるは、まだっ、まだやれるっ プルソン: もっとあそぶんだから……うあああああっ!! バエル: ここまできて、引くわけにはいかない……っ。どれだけやられても、私たちはこいつを…… ヴィネ: 決して攻撃が効いていないわけじゃありません! あと少しのはず……っ、くっ、はぁっ、くううっ……! ベリアル: 進んでも引いても地獄、っちゅうこっちゃ…… 主人公: ヴィネ。あと、どれくらい魔力を出せそうなんだ? ヴィネ: 大きめの一撃なら、あと1……ううん、2回はできます 主人公: たぶん、ここまででダメージは向こうも蓄積されてる。ここは賭けてみよう。次に、オリジンがノーマルを吐き出した瞬間を狙うんだ。 ヴィネ: 分かりました! ベリアル: ほな、ウチらで道を作ったるわ! バエル: 私だって、まだ、やれる……っ! プルソン: ぷるも、くぅっ、ううううっ アスモデウス: 今だ! 行けっ! (ノーマル獣聖騎兵を射出しようと可動部が動く。) (アスモデウスの合図で俺とヴィネは武器を手に突っ込んでいく。) ヴィネ: いっっけええええぇぇぇぇええぇっ!! (背景切換...) (その一撃が、獣聖騎兵の動きを完全に止めた。) (好機を逃さず、一気に畳み掛け――) (背景切換...) (轟音とともに、獣聖騎兵・オリジンは地面に倒れ、そして至るところから爆発を発生させ始める。) ヴィネ: はぁっ、はぁっ、や、やりました……! バエル: 勝った……のね…… (背景切換...) ヴィネ: 皆さん、しっかり…… アスモデウス: かなり消耗したからな。気絶もしょうがないのだ。アスモ様も、もう今にも倒れそうだし (戦闘を終えた俺たちは、近隣の魔族の村に負傷者を運び込んだ。) (いまは魔力の消耗も激しく気を失ってはいるが――) (――犠牲者を出すことはなかった。) ベリアル: ほんま、誰もおらんくならんかったんが、何よりやで。もちろん、あの獣聖騎兵を倒せたことが一番やけど アスモデウス: もう民は泣いて逃げなくていい。アスモ様は王として民を守りきったのだ ヴィネ: 本当にありがとうございました、人間さん。いきなり過去に呼びつけて、こんなことに巻き込んでしまって…… ベリアル: ほな……そろそろお別れやな ヴィネ: これでもう、戦いは終わり危機は去りました。約束どおり、未来にお戻ししますね アスモデウス: え? なんだ、ポチはどこか行っちゃうのか!? なんでだ! 主人公: どこにも行きませんよ、アスモ様 ヴィネ: え……? 主人公: 未来に戻りたいのはもちろんだけど、それはいまじゃない。だって……まだ全部は終わってないだろ ヴィネ: 全部って、え、まさか 主人公: まだみんな、倒れたまま目を覚ましてないんだ。ここで仲間を置いてひとりで戻るなんて、俺にはできない ヴィネ: そんな、これ以上おつきあいいただくわけには 主人公: 最初にヴィネは言ったよな。信頼関係を作れと。それが俺の役目だったはずだ 主人公: この状況でひとり、仲間を置いて帰るようなやつが信頼されるか? アスモデウス: ポチがいてくれるなら、アスモ様も嬉しいぞ 主人公: 方法なんてわからない。でも、どうにかふたりを救いたい。みんなも、そのつもりだったんだろ? ベリアル: そらそうや。獣聖騎兵が片付いたいま、それしかないやろ 主人公: もう一度、ちゃんと9人の王が揃って夜明けを迎えるところを……俺は見届けたいんだ ヴィネ: 人間さん……。ありがとうございます。お言葉に甘えさせて下さい。正直、あなたがいてくれるのは心強いですから…… (元凶たるオリジンの討伐に成功し、世界は獣聖騎兵の脅威から解放された。) (これまで世界のために尽くしてきた9人は、今度は彼女たちのための戦いを始める。) (いつか全員で夜明けを迎えるために――) 629801 - 戦いの果て ヴィネ: ……これで、戦いは終わったんですよね アスモデウス: そうなんだぞ。アスモ様たちは、民を守りきった魔王なんだぞ……! (ある日、冷蔵庫を通じてオトギノクニに迷い込んだ俺は、未来視能力を持つヴィネによって過去に召喚された。) (課せられたタスクは『出会う9人の魔王の信頼を得て、謎の巨兵を倒す』こと。) ベリアル: はよ、のんびり休みたいわ (いま、立ちはだかった巨兵――獣聖騎兵・オリジンを倒し、ようやく目的を達したのだった。) ベリアル: せやけど、まずみんなを運ばんとあかんな。近くにウチら魔族の村があったやろ アスモデウス: そうだな。早く治療してやらないとな (だが犠牲は少なくなかった。) (俺は地面に倒れ伏した『魔王』たちを抱き起こす。) 主人公: みんな…… ヴィネ: 申し訳ありませんが、人間さん。みんなを運ぶところまで手伝ってもらえませんか 主人公: もちろん バエル: …… パイモン: …… ベリアル: 倒れとるんも4人、動けるんも4人やから、ひとりずつ運ぶで プルソン: …… ザガン: …… アスモデウス: みんな、助かるよな。このまま微精霊になったりしないよな? ヴィネ: ええ、きっと大丈夫ですよ 主人公: 微精霊になる……それはオトギノクニにおける死と、ほぼ同義だってことを学んだ 主人公: 負傷したみんなはもちろんだけど、ここに来るまでに微精霊になってしまったベレト、バラーム…… 主人公: 彼女らもこの戦果をどこかで喜んでくれているだろうか 629802 - まだ残っている責務 ヴィネ: ありがとうございました、人間さん。おかげで助かりました ベリアル: ほな……そろそろお別れやな アスモデウス: え? なんだ、ポチはどこか行っちゃうのか!? なんでだ! 主人公: どこにも行きませんよ、アスモ様 ヴィネ: な、なに言ってるんですか。あなたのおかげで獣聖騎兵は倒せたんですよ ベリアル: せやで。わざわざヴィネの能力で未来から兄ちゃんを呼んだんは、全部そのためやんか ヴィネ: だからもう、未来に戻っていただかないと…… 主人公: まだみんな、倒れたまま目を覚ましてないんだ。ここで仲間を置いてひとりで戻るなんて、俺にはできない ヴィネ: だ、だって…… 主人公: 信頼関係を作れといったのはヴィネだろ ベリアル: まあ、せやな。ここですっと帰るような兄ちゃんやったら、信頼関係はでけへんな。ええやん、戻るんはいつでもできるんやろ? アスモデウス: ポチはずっとアスモ様のお世話をするんだぞ。なっ ヴィネ: 人間さん……。ありがとうございます。お言葉に甘えさせて下さい。正直、あなたがいてくれるのは心強いですから…… アスモデウス: って言っても、みんなが目を覚ますまでここで待ってるだけだろ? ポチはごはんの準備とかしてくれればいいんじゃないか? ベリアル: いや……実はな、ウチちょっと考えてたことがあってん ヴィネ: ……ベレトさんと、バラームさんのことね ベリアル: ふたりとも微精霊になってしもたけどな。復活させられんかと思っとるんや 主人公: ……!? アスモデウス: 復活っ!? そんなことできるのかっ ベリアル: みんなは村の医者に任せるしかないやん。せやったら、その間に動けるウチらでやれることやるべきなんちゃうかなって ヴィネ: 可能性があるなら、試してみましょう。何も失うものはないんですから アスモデウス: じゃあここからまた、旅に出るんだな ベリアル: そういうこっちゃ。まずはウチの古い知り合いのとこに行くで 629803 - 『賢者』ガープ (雪の国から船に乗り、着いた港から馬車に乗り換えてまたしばらく進み――) (魔族の町の郊外にある古びた砦に到着した。) ガープ: ベリアル……! 誰かと思えば、ずいぶん久しぶりだね ベリアル: 元気そうやな。あー、こいつはガープ。ウチの昔からのツレや ガープ: 魔王になってから連絡のひとつもよこさないで、よくツレだなんて言えるね ベリアル: すまんって。そない拗ねんでもええやろー? 主人公: こ、これ怒ってないのかな……? 大丈夫か? ヴィネ: た、たぶん……。ふたりは長いおつきあいでしょうから、ね? ベリアル: 獣聖騎兵を倒した、あの武器の情報もガープが調べてくれたんやで アスモデウス: そうだったのか! ありがとな、おまえすごいやつだな ヴィネ: どこから持ってきた情報なのかと思ってましたけど、そうだったんですね ガープ: 力になれたのなら何よりだけど。それで? いきなり来て用件は何? ベリアル: それがなぁ…… (…………………………。) ベリアル: っちゅうことで、微精霊になった仲間を復活させようって話なんや。ほんで、例のアレを思い出したんよ ガープ: ……『ソロモンの小さなカギ』だね ヴィネ: カギ……? ガープ: わたしたち魔族に伝わる伝承だよ。創造期のころ、ソロモンと名乗る者が魔族を支配していたという…… アスモデウス: そのソロモンてやつが、ふたりを復活してくれるのか? ガープ: カギを手に入れればもしかするかもしれないね 629804 - カギ探し ヴィネ: じゃあさっそく行きましょう、ソロモンのカギを探しに! ガープ: どこに? カギの在り処も知らないのに ヴィネ: うっ……そ、そうでしたね ベリアル: そない意地悪言わんといてや。なんでわざわざ、ここまで来たと思てんの アスモデウス: ガープが場所を知ってるのか! ガープ: ふう……仕方ないね。いま地図を書くから ベリアル: なに言うてんの。ガープも一緒に来るんやで ガープ: はあ? なんでわたしが ベリアル: ガープはウチをサポートしてくれるんやろ。『最強の魔王』にするために ガープ: ……ここでセアルとの約束を持ち出すのはずるいですよ ベリアル: ウチ、そういうやつやん アスモデウス: なあ、ヴィネ。セアルって誰だ? ヴィネ: さあ……たぶん、人の名前だとは思いますが ガープ: はあ……仕方ないね。じゃあ、さっさと行こう ガープ: 言っておくけど、カギの在り処はわたしの独自に研究した結果だから。行ってみて空振りの可能性もあるのは覚えておいて アスモデウス: 大丈夫だ、アスモ様は『持ってる』魔王だからな。きっと大当たりだぞ ガープ: 能天気で幸せそう。まあ、わたしを責めないならなんでもいいけど アスモデウス: 能天気!? おい、アスモ様になんて言い方だ! ヴィネ: まあまあ。落ち着いてアスモ ベリアル: 堪忍な。こいつ、どうしても一言多いんや 主人公: うーん、不安なメンツだな…… 629805 - 獣聖騎兵なき後 ガープ: じゃあ、例の暴れまわってた……獣聖騎兵、だっけ? そいつはもう出てこないってこと? ベリアル: そのはずやで。親玉を倒したさかいな ヴィネ: 実際、ガープさんのお宅を経由してここまで結構な道のりですけど、1回も獣聖騎兵に遭遇していませんからね アスモデウス: そうだな。今までなら確実に出てきてた ガープ: そして黒幕は天空神殿かもしれない、ってこと ベリアル: 確証はあらへん。けど、神殿近くから出てきたんは間違いないんや 主人公: 俺がヴィネに呼ばれる直前、現代では天空神殿を信頼できるかどうかで、仲間たちが議論する場面もあったな…… ヴィネ: ただ、獣聖騎兵と因果関係があるかはわかりませんが、低級な魔物の数は増えていますよね アスモデウス: お、そうだよな。まあ、アスモ様たちの敵じゃないけど! 主人公: でも普通の人たちにとっては脅威ですからね。俺もですけど アスモデウス: んむぅ、それもそうだな。つまり、王たるアスモ様は民のために魔物討伐もしながら進まなきゃいけないんだぞ ヴィネ: 人間さんってば、アスモの扱いにすっかり慣れちゃって…… ガープ: そういえば……人間さん、だっけ。どうしてアスモさんだけ『様』なの? しかもポチって呼ばれてるし 主人公: あ、いや……奴隷だった頃の名残というか ガープ: 奴隷……? どういう経緯があったのか、すごく気になる…… 629806 - 力を持つ者として ヴィネ: やっぱり魔物が増えてるみたいです。特に、北側の森は完全に占拠されてて困ってるそうで アスモデウス: よし! アスモ様のかっこいいところを見せる場面だな ベリアル: いやいや、待ちーな。たまたま寄っただけの村で、そこまでしとったらキリないで。ウチら目的があって移動しとるんやから ヴィネ: でも、知ってしまった以上、見捨てるなんてできません。その森、村から目と鼻の先なんですよ 主人公: 俺もできる限りのことはするから ベリアル: ……っ、なんや、ウチが悪者になってまうやないか。しゃーないな、ほなちゃっちゃと終わらせるで ガープ: 急ぐ旅ってわけでもないからね アスモデウス: おい、ポチ。4人のときはフォーメーションどうするんだ? 主人公: 魔物相手ならそれぞれで戦っても大丈夫でしょうけど、念のために……こういう変形の動きにしましょう。ヴィネ、わかるよな ガープ: フォーメーション? ヴィネ: 他の仲間もいて人数が揃っていたときは、連係して戦うようにしていたんです ベリアル: 相手が1体でも相当強かったさかいな。取り囲んでうまいこと狩らんと、ピンチになってまうんや アスモデウス: む……そこの岩の陰、なにか動いたぞ! ヴィネ: います! 魔物、5、6……7体です! 主人公: みんな、手筈通りに! ヴィネ: アスモ、突撃してOKです! ベリアル、サポートに。ガープさんは側面から、相手の背中を見るイメージで ベリアル: よっしゃ、やったるでぇ! 629807 - 再生の図式 ヴィネ: ここは……図書館、ですか……? ガープ: いや、没落貴族の書庫だよ。もうこの屋敷は誰も使っていないから、完全に忘れられた蔵書になってしまったけど アスモデウス: 書庫にカギがあるのか? ベリアル: いや、『ソロモンの小さなカギ』はな、カギとちゃう アスモデウス: はあ? なに言ってんだ? ガープ: これだよ。知性の王ソロモンとわたしたち魔族をつなぐとされる、禁忌の魔術書『ゴエティア』――通称『ソロモンの小さなカギ』 アスモデウス: 魔術書がカギなのか!? ベリアル: まあ、そういう名前で呼ばれてるっちゅう話や ヴィネ: その魔術書には、いったい何があるんですか……? ガープ: ソロモン王は、わたしたち魔族をこの魔術書で召喚し、わたしたちの知識や経験を吸収したと言われてる ベリアル: 召喚てのは、異なる場所からその存在を呼び出す術や。でも、離れた場所からどうやって呼び出すんか、その仕組みがわかるか? ヴィネ: 諸説ありますが……召喚を瞬間移動として捉えた場合、錬金術の考え方では人体錬成にあたります。そうすると、かなりの代償を払わなくてはいけません ガープ: ソロモンが代償をどれくらい払ったかはわからない。でも、要素を再構成しているのだとしたら……仲間を戻すには何が必要? 主人公: まずは肉体。生命活動が止まって入れ物になっているが、ふたりとも丁寧に埋めて時間もそれほど経っていない ベリアル: それから魂。これは微精霊として、弱くなっとっても存在はしとる アスモデウス: あと、なんだ? ガープ: イマジュマイト。これが肉体と魂を繋ぎ止める役割を持ってる ガープ: 肉体を損傷し、イマジュマイトの大量流出により魂と肉体が離れる――これがベレトとバラームに起きていること ヴィネ: つまりイマジュマイトを調達すれば、ふたりの肉体と魂をつないで再構成できる……? アスモデウス: よくわからんがすごいじゃないか! ヴィネ: でも、私たち自身の構造を詳細に把握していないのに、再構成ができるのでしょうか ガープ: それは魔術書が担当してるんだよ。わたしたちは材料を集めればいい ベリアル: でも、そんなイマジュマイト、どこに…… 主人公: ……たぶん、俺の持ってるエルマイトを使えると思う 629808 - ベレトの眠る山 ヴィネ: こんな寒いところで、ベレトさんは…… アスモデウス: 後ろから出てきたやつがいたんだ。戦って、やりあってたのに……一瞬だけ油断した。ベレトも、アスモ様も アスモデウス: あんなふうに腕が伸びるなんて思わなくて……! 主人公: アスモ様。もう過ぎたことです。あれは全員の責任なんですから アスモデウス: うん……。ごめん、ポチ。めそめそしてる場合じゃなかったな ベリアル: ガープ、どうや。見つかりそうか ガープ: 肉体を失って微精霊化しても、そうそう遠くに移動はしないからね。わたしの作った装置で見ると、少し離れた場所に反応がある。心当たりは? アスモデウス: あ……そうか。殺された場所かも…… ガープ: なるほど。現場から少し離れて遺体を埋めたわけだね。なら、人間さん。ベレトの遺体のほうを運ぶから手伝って 主人公: えっ……そ、そうか。精霊のほうを動かすのは難しいのか ガープ: 捕獲装置を作れなくはないけど、数ヶ月はかかるからね 主人公: いや、大丈夫だ。急いだほうがいいだろうし アスモデウス: アスモ様も手伝うぞ (………….。) ベレト: ………… ヴィネ: 改めて見ると、本当にひどい……。ねえ、ガープさん。ここまで損傷していても、大丈夫なの? ガープ: 正直、思った以上の損傷だけど……イマジュマイトの量でカバーできるギリギリの範囲じゃないかな ベリアル: バラームのほうがまだ損傷は少なかったな ガープ: ただ彼女の場合、暴走状態で亡くなったんでしょ。復活直後にどういう挙動をするかが未知数でリスキーだね ヴィネ: 万一に備えて、みんなが復活するのを待ったほうがいい、ってことですね ベリアル: ほな、始めよか 629809 - 蘇るベレト ガープ: 人間さん、わたしといっしょに魔導書を持って 主人公: わかった……。魔導書に向けてエルマイトを送り込むようなイメージでいいのか? ガープ: うん、それでいこう ガープ: 汝、偉大なる王ベレトよ。地獄の85軍団を従えし序列13番の恐るべき王ベレトよ ガープ: 汝を生み出せし創造の印によって、創造を生み出せし闇によって、闇を生み出せし真なる夜によって、これらに蓄えられし創造と想像の呪力によって ガープ: 我は汝を召喚し命ずる。我が望み、汝の持つ職能を発揮し、汝の信じるものに誠実であるよう姿を現せ―― ベリアル: うあっ、な、なんや!? ヴィネ: 光が……! ベレト: ………… アスモデウス: ど、どうなんだ? ヴィネ: あ……見てください、お腹の傷っ……あれ、ふさがってませんか……? ベレト: ……ん、んんっ……こ、ここは……? アスモデウス: や、やった! ベレトだ! ベレトが起きたぞ! ヴィネ: 成功です! ガープ: ふう……よかったです 主人公: くぅっ、ふう……! かなり消耗したけど、でも、なんとかなったみたいだな…… ベレト: え、どういうこと……? アスモ、それにポチも……ベリアルとヴィネまで!? ベレト: ううん、確かあたし……獣聖騎兵にやられたんじゃ…… ヴィネ: 復活したんですよ! ガープ: より正確に表現するなら『再召喚』と言うべきだろうね ベリアル: なんでもええ、これでバラームにも希望が出てきたで! 629810 - 魔術書の呪い ベレト: そう……。状況は把握できたわ。何にしても、獣聖騎兵を倒せたのは、本当に良かったわね ベレト: バラームはかわいそうだけど、でもあたしがこうして生きてるんだから、きっとバラームもうまくいくはず……そういうことね アスモデウス: 他の4人にも早く教えてあげないとな! ヴィネ: そうですね。もう目覚めているかもしれませんし、一旦ここから雪の国に戻りましょうか ベリアル: ここが雪の国って言われても信じられるくらい寒いのに、また移動か……。ま、しゃあないな 主人公: ベレトさん、大丈夫ですか。普通に歩けそうですか? ベレト: ええ、大丈夫みたい。ありがとう、ポチ ガープ: ……? 待って。なんだろう ベリアル: なんや、どうしたんや (振り返ると、ガープが持つ召喚書からどす黒い霧のようなものが漏れていた。) (一見して、それが危険なものだと察する。) ベリアル: あかん、ガープ! 本を捨てるんや! ガープ: う、うあああっ!? んぐ、ぐっ、ぐぷっ…… (黒い霧は、まるで意志を持った生き物のように、ガープの口を狙って入り込んだ。) (本から漏れ出た霧状の闇が、ガープの口に次々に吸い込まれていく。) ガープ: ぐぷっ、おぶりゅるりゅるっ!? ヴィネ: ガープさん!! ガープ: ぐぷっ、ふうっ、ぐふううぅぅ…… アスモデウス: そんな、まさか…… (ついに仲間の復活を果たした一行。) (次はバラームだと意気上がる中、魔導書から生まれた闇はガープを捉えた。) (何故、この事態は起きたのか。) (そしてガープを救出することはできるのか――) (次回『魔術書の呪い!? 序列33番 地獄の総裁ガープ』) 629811 - ガープの暴走 (謎の脅威・獣聖騎兵を倒した人間さんと魔王たち。) (ある者は命を落とし、ある者は傷を負った。) (そんな中、残された者たちは失った仲間の復活を試み奔走する。) (そしてようやく、魔術書『ゴエティア』によって) (ベレトの『再召喚』を果たすのだが、同時にガープに異変が……!) ベリアル: いまの、みんな見とったか!? ヴィネ: ええ……! 魔術書から出てきた黒い霧が、ガープさんの口の中に…… アスモデウス: あれは、なんだったんだ!? ベレト: 良くないものだってのはわかるわね。それにガープは…… ガープ: くっ、ううっ、くふうううぅぅぅ……っ!! ヴィネ: バラームさんのときと同じ、暴走状態……っ!? ベリアル: 何があかんかったんや……。術はうまくいって、ベレトもちゃんと復活しとるのに ベレト: まさか、あたしが復活するためにガープが犠牲になったっていうの……? ガープ: 殺す……殺してやる……! 全部まとめて殺す……! 手出しは、させない……っ 主人公: ……? ガープ: うあああああっ!! アスモデウス: 来るぞっ! 気をつけろ! 629812 - 解決の糸口 アスモデウス: 動きはそこまで速くないぞ。人数でも、ポチは別としても4対1だ。ちゃんとフォーメーション使って取り囲んで戦えば勝てるんだぞ ヴィネ: そ、それはダメです、アスモ。確かに勝敗で言えば勝てると思います。でもそれは結局、バラームのときと同じ轍を踏むことになります アスモデウス: あ……そっか……。囲んだところで、最後に攻撃したらダメだもんな 主人公: 攻撃以外で無力化する方法を見つけなきゃいけないってことか…… ベレト: 方法もわからないんじゃ、お手上げじゃない……。どうすればいいのよ ベリアル: 最悪、あの『ゴエティア』が使えるんなら、ガープを攻撃で止めてもええかもしれん ヴィネ: そんな、ベリアル……! 復活できるとしても、そんなこと ベリアル: あいつかて、魔王候補だった高位魔族や。それくらい覚悟しとるやろ。けど……原因がわからんと解決したことにならんからな ベリアル: ガープを復活させるのに今度はヴィネが暴走したら……なんてやっとったら、埒が明かん ガープ: 何をごちゃごちゃやってるのよ……。そっちが来ないなら、あたしからいくわよ! はああぁぁぁっ!! アスモデウス: うあああああっ!? ヴィネ: アスモ! アスモデウス: だ、大丈夫だ。アスモ様は最強だからな。この程度の攻撃、なんでもない! 主人公: もしかして、これは…… 629813 - 刷り込まれた『敵意』 ヴィネ: 何かわかったって、人間さん、どういうこと!? 主人公: さっきからガープの口調がおかしいんだ。まるでベレトさんみたいだと思わないか ベリアル: 言われたら、そんな気ぃするけど ベレト: ていうことは、やっぱりあたしを復活させたときに何かが起きた……? ヴィネ: 復活は、死の直前を再現することになるはず……。ベレトさん、難しいかもしれないけど思い出してもらえませんか? その瞬間と、いまと、何が違うのか……そこにヒントがあるはずなんです ベレト: 違い……? そう言われても…… アスモデウス: 戦闘モードじゃなかったんじゃないか? いまはガープがこんなことになってるけど、復活したときベレトは、すごく落ち着いてた ベリアル: 確かにそうやな。死の直前って言うんなら、獣聖騎兵と戦闘しとる真っ最中や ヴィネ: ということは、ベレトさんから獣聖騎兵への敵意が失われていたわけですよね。でも、魔術や錬金術の世界において、突然何かが発生したり消えたりすることは、考えにくいんです 主人公: 獣聖騎兵への敵意だけが抽出されて、ガープに移植されている……? ヴィネ: ひとつの可能性ですが ベリアル: もしほんまにそうやとして、どないしたらええんや ヴィネ: あの魔術書に何かヒントがあるかもしれない……。ガープさんから魔術書を奪えませんか? アスモデウス: それしか手がないならやるしかないな! ベリアル: よっしゃ、やったろ。魔術書、ヴィネなら多少は分かるやろ ヴィネ: 本職ではありませんが……基礎は勉強しているつもりです……! ベレト: ごめんね、みんな。間接的にこれって、あたしのせいなのよね…… 主人公: 気に病む必要はないよ。あのときの場面で獣聖騎兵に敵意がないなんて、不自然すぎるんだから ヴィネ: ええ。再召喚の副作用みたいなものです ベリアル: ほな、行くで! アスモ、ウチの動き見ながら援護してや! アスモデウス: まかせとけ!! 629814 - 魔術書の闇 ベリアル: よし……っ! ヴィネ、これが魔術書や! 受け取りや! ヴィネ: ありがとうございます! といっても、見てどこまで分かるかですが……あっ、これは……? ヴィネ: 魔術書から、まだ闇が漏れてる……! ガープさんに流れ込んだのがすべてではないんですか……? 主人公: もしかすると、本体はこの魔術書なのかもしれないぞ ヴィネ: 確かに……。ガープさんに流れ込んだように見えましたけど、あれは魔術書にいる本体が枝葉を突っ込んだだけかも……? ガープ: 許さない……っ、あたしからすべてを奪ったおまえたちを……残らず消し飛ばしてやる……っ! アスモデウス: くうううっ!? おい、ベレト。ずいぶん気持ちが入ってたんだな ベレト: ……あたしの持ってた感情が影響してるんだとしたら、きっとこれはキルシュタインの町のことだわ…… ベリアル: なんやそれ。どういう場所なんや ベレト: ずっと旅人として世界をさすらっていたあたしが、やっと腰を落ち着けられた町よ……。あたしは、ここを故郷にするんだって、本当に思ってたの アスモデウス: ……それを、壊されたんだな。獣聖騎兵に ベレト: ……ええ ガープ: 跡形もなく、消し飛ばしてあげるわ……! あたしの、大切なものを奪ったのと同じように……! ヴィネ: ……人間さん。力を貸してくれませんか ヴィネ: もし、この魔術書が本体なのだとしたら、ここで直接、人間さんのエルマイトを流し込むことで中和できるかもしれません ヴィネ: でも万一、逆流しようものなら人間さんも…… 主人公: いや、いい。他に手立てがないんだ。やるしかない ヴィネ: ……人間さん、ありがとうございます。そうと決まったら急ぎますよ。この魔術書に集中してください……! 629815 - ゴエティア ガープ: う、あ……? あああぁぁ……っ!? ベリアル: ガープ! しっかりしいや! ガープ: ……っ、わたしは……!? ベレト: よかった、正気を取り戻したのね アスモデウス: うおっ!? ポチっ、それ……! (ガープがもとに戻って一息ついたのもつかの間。) (ヴィネとふたりで持っていた魔術書は、突如として青い炎に包まれてしまう。) ヴィネ: これは……おそらく、魔力の消失です。人間さんのおかげで瘴気は相殺されましたが、代わりに魔術書が持っていた魔力も失われたのでは…… ガープ: 待って、わたしの装置で確かめる ベリアル: どないや……? ガープ: ……魔力が感知できない。当初はあったはずなのに アスモデウス: ソロモンのカギとか言われてる魔術書なのに、たった1回の戦闘で消滅しちゃうのか。だとしたら、むしろポチがすごいってことにならないか? ガープ: ああ……そういうこと。事情がわかった ベレト: どういうことなの? ガープ: この魔術書は、オリジナルの『ソロモンの小さなカギ』じゃない。これは、写本なんだ ベリアル: 写本…… ガープ: オリジナルに較べて安価で、作るのに時間もかからない。けど、扱える魔力量は推して知るべし…… ベレト: だから、あたしが残していた気持ちを処理しきれなかったっていうこと……? 主人公: いずれにしても、この魔術書はもう役目を果たせないわけだな ベレト: それなら、必要なのは……魔術書ね。写本ではなく、オリジナルの アスモデウス: それがないとバラームは復活できないんだな ベリアル: せやな。でも一旦、雪の国に戻ろうや。みんなが目覚めてるかもわからんし、それに……少し休んだほうがええって ヴィネ: そうですね。こうしてベレトさんが復活しただけでも、奇跡に近いんですから ベレト: そうね。この命はみんなが繋いでくれたものだから……大切に生きることを誓うわ アスモデウス: よし、じゃあ戻るぞ! (こうして俺たちは、復活したベレトを伴って雪の国に戻った。) (完璧ではないかもしれない。でも、ベレトというこの上ない成果が、自分たちの今後を後押ししてくれるようだった。) ヴィネ: 結局、まだみんなは目覚めていませんでしたね アスモデウス: ポチ。おまえはここに残れ。おまえがいたほうがみんなが早く目覚めるかもしれない。アスモ様の手を握ったときみたいに 主人公: ……わかりました。でも皆さんも、くれぐれも注意してくださいね ベリアル: ほな、うちらは行ってくるわ。オリジナルの『ゴエティア』を探しにな ベレト: ポチ、みんなのことお願いね。それと…… ベレト: ありがとう。あたしがここにいるのは、半分はあなたのおかげよ (こうして事件はひとまず解決をみた。) (だが、まだ復活していない仲間を思えば、まったく何も終わっていない。) (今度こそ写本ではない真の『ゴエティア』を手に入れるべく、まだ旅は始まったばかりだ。) 630201 - 希望を求めて (ある日、冷蔵庫を通じてオトギノクニに迷い込んだ俺は、未来視能力を持つヴィネによって過去に召喚された。) (出会った9人の魔王の信頼を得て、謎の巨兵を倒す――) (当初の目的は達成することができた。) ベリアル: ほな、行ってくるわ。みんなのこと、よろしく頼むで 主人公: ああ、まかせてくれ。なんて言っても、俺に何かできるわけじゃないが ヴィネ: いえ、そばにいてくれるってことは伝わるはずですから。みんな目覚めてないだけで、ちゃんとそこにいるんですし (だが、ベレトとバラームが犠牲となり微精霊に姿を変えてしまった。) (加えて、4人の仲間も力尽き眠り続けている。) アスモデウス: アスモ様はすごいからな! 『ゴエティア』のオリジナル、必ず見つけ出してやる。そしてバラームを復活させるんだ! ベレト: けど、在り処は正直、手探りに近いわよね……。ガープの研究資料でかなり絞られているとはいえ、候補地はかなり多いし (残されたメンバーで魔術書ゴエティアの写本を手に入れ、なんとかベレトは復活したもののディマイトの暴走を招いてしまう。) (安全かつ確実にバラームの復活を遂げるためには、写本ではなくオリジナルが必要だ。) (ベリアルたちはその探索に向かう旅に出ようとしていた。) ベリアル: それだけ写本が出回ってるっちゅうことやな。ガープもついて来れたらなんぼかマシやったかもしれんけど ヴィネ: 暴走したばかりで負担も大きいでしょう。いまは静養に専念いただいて無理しないほうがいいですよ アスモデウス: 片っ端から調べていけばいいんだ! いつか本物に当たるだろ 主人公: くれぐれも皆さんの安全第一でお願いしますよ ベレト: わかってるわ。せっかく復活したんだもの。大事にしないとね。それじゃあ、行ってきます 630202 - 4人の目覚め プルソン: んん……あ、れ……? ここ、どこ…… パイモン: ん……なに、私たち……どうなったんだっけ…… ザガン: 他のみんなはどこ……? バエル: うっ……頭がくらくらする…… 主人公: 皆さん……! 目が覚めたんですか! よかった……! バエル: ポチ? 待って、何がどうなって……? 主人公: いま説明します。まずは熱いお茶でも淹れますから、それで気持ちを落ち着けて下さい ザガン: うん……ありがとう、ポチちゃん…… (…………。) (彼女たちと出会った当初は使用人扱いだった。) (こうしてみんなのためにお茶を淹れるのも、もう手慣れたものだ。) (ポチという呼び名はそのときの名残だが、関係性は当初から大きく変わったものだ。) バエル: そう、ベレトが……! プルソン: それでみんな、その『まじゅつしょ』っていうのを探しに行ったんだね (一連の顛末を説明すると、それぞれの顔に希望が灯る。) パイモン: ベレトが復活できたなら、バラームだって絶対に希望がある バエル: うん、そうだよね。だったら、私たちがすべきことは…… ザガン: バラームちゃんの復活。魔術書『ゴエティア』を探し出すことね。それも写本ではなく、オリジナルを プルソン: ヴィネちゃんたちとお話しなくていい? もう探したところ、また行っちゃわない? パイモン: プルソンの言うとおり。手分けするのはいいとしても、ちゃんと歩調を揃えないと無駄が発生する可能性がある バエル: けど、向こうはもう旅に出ちゃったんでしょ。まだ追いつけるかしら 主人公: いえ、かなり時間が経っているので追いつくのは難しいですね バエル: そう……。ここに戻ってくるのを待っていても時間の無駄だし、非効率は承知で出るしかないか…… ザガン: この集落にメモを置いていきましょう。きっと一度は戻ってくるでしょうし パイモン: ……かなり時間が経ってるって、ポチ……。その間、あなたひとりだったってことだよね 主人公: ……ええ ザガン: ……そっか。がんばってたんだね。えらい、えらい 630203 - 発想の転換 プルソン: これ、すごいね。ゴエティアが落ちてる場所、ぜんぶのってるの? バエル: いや落ちてるってわけじゃないとは思うけど ザガン: ガープちゃんって子が調べてくれたのよね。助かるわ パイモン: ヴィネたちも、同じリストを持ってるんだよね 主人公: クラ―ネオ海域のほうに向かうと言ってました。なので、別方面に行けば重複する無駄はしばらくは避けられると思います バエル: そうだね。って言っても、かなり範囲が広いからひとつひとつ見て回るだけでも、どれくらいかかるか…… ザガン: 先にバラームちゃんのところに行ったほうがいいんじゃないかしら。せっかく見つかっても身体がもうダメになってしまうかもしれないでしょ パイモン: 確かに。ベレトは山の山頂付近だったから状態も良かっただろうけど、バラームは違う バエル: そもそもバイノルドアトラス島は、沈みゆく島って言われてるよね。ザガンの言うとおり、運び出したほうがいいのかも プルソン: 身体って、すぐくさっちゃうよね ザガン: ええ、そうね。でも大丈夫よ、ぷるちゃん。おねえさん、エンバーミングっていうの勉強したから バエル: え……なんかふたりとも、会話の内容が微妙に不穏なんだけど……私の気のせい……? パイモン: 待って、みんな。考えてみたんだけど……私たちが探すべきはゴエティアじゃないんじゃないかな パイモン: ソロモンを探すの。創造期、私たちをゴエティアで召喚した張本人。あの人がオリジナルを持ってるか、或いは保管場所を知ってるはず プルソン: んー。でもソロモンってどこにいるの? パイモン: わからない。だから探すんじゃない。ザガン、出番だよ 630204 - 召喚術 プルソン: ザガンちゃん。黒スグリの実、持ってきたよ ザガン: あら、ありがとう。じゃあ、そこの台に置いてくれるかな 主人公: しかし……召喚術、ですか ザガン: パイモンちゃんにはびっくりね。探すんじゃなくて、召喚しちゃえばいい、だなんて。言われてみれば、確かにその通りなんだけど プルソン: そんなことできちゃうなんて、ザガンちゃんはすごい ザガン: できるかどうかは、正直わからないけどね。おねえさんは錬金術師だけど、召喚士ではないから 主人公: でも召喚術の手順はちゃんとご存知なんですね ザガン: まあ、一通りはね プルソン: ねえ、ザガンちゃん。ぷる、いいこでおてつだいしたら、またワインくれる? 主人公: えっ、ワイン? プルソン: ザガンちゃんね、おみずからでもワイン作れちゃうの 主人公: 水がワインって、まさに錬金術ですね プルソン: おみずはあっさりしてるの。でも、ぷるはコクがあるのがすき 主人公: こんな見た目だけど子供じゃなくて、れっきとした魔族の王だもんな。そりゃまあ、ワインくらい普通に飲んで問題ないか…… ザガン: ぷるちゃんの好きなフルボディを作るには、血を調達しなくちゃね 主人公: えっ、血……!? 630205 - ザガンの錬金術 パイモン: 準備は整ったね。ありがとう、ザガン ザガン: いいえ~。何箇所もあるき回るよりずーっと楽だし 主人公: しかし召喚って大変ですね。ゲームとかで、呪文を唱えたら一気に出てくるようなイメージしかなかったんで プルソン: げーむって? 主人公: あ、いえ バエル: ザガンだからまだ手際もいいのよ。ちゃんと魔術の基礎をわかってる人だから プルソン: 魔術と、錬金術と、召喚術はなかま? ザガン: うーん、直接は関わりはないのよ。ただ、基本となる考え方とか、そういう部分は共通してるかなぁ プルソン: むずかしい パイモン: 剣術の達人なら、槍を持たせてもそれなりには戦えるでしょ。槍の名手にはかなわないけど、そこらの素人よりはマシ プルソン: ふむふむ バエル: 錬金術師としては一流だものね。なんだっけ、あれ。すごいの作ったんだよね。『愚者の石』だっけ ザガン: ふふっ、もうだいぶ昔のことよ。それよりほら……これで準備万端。あとはこの魔方陣に、私の血を垂らすだけ―― (ザガンは躊躇いなく、手のひらに当てたナイフを引く。) (魔法陣に血液が滴り落ち、またたくまに円全体に広がったかと思うと……。) プルソン: わ……っ! ソロモン: ん……? これは、どういうことです? バエル: 久しぶりだね、ソロモン 630206 - 大召喚士ソロモン ソロモン: なるほど、そういった事情で、この魔法陣で私を召喚したというわけですか バエル: そういうわけだから、私たちの……仲間の命運がかかってるの (召喚後、一通りの事情を説明した。) (ソロモンは反発することもなく落ち着いて聞いてくれていたが……。) ソロモン: しかし、これまで多くの者を召喚してきましたが、まさか私が召喚される日が来ようとは ザガン: たまには、こういうのもいいでしょう? ソロモン: ええ、たしかに。非常に新鮮で、とても興味深い。そもそもこの魔法陣自体も私は見たことがないものです。ぜひ詳しいお話を パイモン: ストップ。本題はそこじゃない ソロモン: ええ、わかっていますとも。ゴエティアを使用したい、ということでしたね。召喚術の応用で微精霊から復活させるなんて、考えたこともありませんでしたが プルソン: いま、もってる? ソロモン: いえ。別の場所に保管しています。もちろん、現在地がわかれば、道案内もできますが…… パイモン: 条件? いいよ、言ってみて ソロモン: あの獣聖騎兵を殲滅したという、あなたたちの能力を詳しく観察させてほしいですね。実に興味深い バエル: 観察……。まあ、ちょっと調べるくらいならいいんじゃない? 妙な実験に付き合うのはお断りしたいけど ザガン: 飲まないと、話が進まないものね。いいわ、ただしバラームちゃんが戻ってきてからね ソロモン: では、交渉成立、ですね 630207 - 隠し場所 バエル: こんなところに、本当にあるわけ? そんな大事なものが…… パイモン: 豪華で堅牢な建物とは違って、まさかこんなところに、という考え方で隠してあるんだね ソロモン: そういうことです。でも、あなたたちのリストに載っていたから、完全に隠し通せていたわけでもなさそうですが プルソン: きっと、ガープちゃんがゆうしゅう 盗賊1: おう……おまえら、ここをどこだと思ってんだ 盗賊2: おいおい、いい女ばっかりじゃねぇか。こいつは逃がすわけにはいかねぇなぁ パイモン: ……クズが ソロモン: どうやら、私が知らないうちに盗賊のアジトにされていたようですね バエル: 仕方ないね。面倒だけど、やるしかないか 盗賊1: おおっとぉ、動くんじゃねえよ。こいつがガブッといっちまうぜ ザガン: 魔物!? この人たち、魔物を使役して用心棒代わりに……! 主人公: ぐあっ!! ソロモン: ぽち! 盗賊1: 先に主力を潰しておけば、あとは姉ちゃんたちとじっくり楽しめるって寸法よ…… バエル: バカなやつら……男だからってだけでポチが戦力だと思ったわけ? プルソン: うう……! ぽちを、いじめた……! ゆるさない!! 盗賊2: ――っ!? なっ、ま、魔物が一撃で……っ! 盗賊1: 逃げろーっ! プルソン: ゆるさない……っ!! ぜったい、ころすっ、ころすころすころす! ぜんぶ、ばらばらの、ぐちょぐちょにする!! ザガン: ぷるちゃん! わたし、追いかけるわ。ポチちゃんをお願い パイモン: わかった。頼んだよ 主人公: うぐ……やば、ちょっと出血が多い……っ パイモン: 早く傷を塞がないと。バエル バエル: ……くっ、わかってるってば! ポチ、歯を食いしばって 主人公: え? あの、なんで殴ろうとして 主人公: ふぐぉぅっ!? バエル: 私の能力だよ。殴った相手を回復することができるの 主人公: めっちゃ顔が痛い……けど腹の傷がふさがって……? あ、ありがとうございます…… 630208 - 再び、沈みゆく島へ ソロモン: へえ、ここがバイノルドアトラス島ですか。本当にもう、誰もいない捨てられた島なんですね ザガン: ええ。だからほんと、バラームちゃんはひとりぼっちのはずよ プルソン: …… バエル: …… パイモン: ふたりとも、この前からずっとその調子だけど、いい加減にしたら プルソン: ぷるは、はんせいしてるの。ぽちがいじめられて、おこりすぎちゃった。ザガンちゃんにも、迷惑かけた ザガン: 気にしなくていいのよ、ぷるちゃん バエル: 私はやっぱりその、あの殴って回復する能力は、あんまりポチには知られたくなかったっていうか…… 主人公: え? いや、あれなかったら死んでたかもしれないんですから。本当に感謝してますよ バエル: そういうことじゃなくて……。ポチの中にある、私の癒し系とかシスターだし優しい、みたいなイメージを壊しちゃったでしょ…… 主人公: そんなイメージ1回も持ったことないんですが バエル: はあ!? なんでよ!? パイモン: はいはい。そういう、くだらないのは後回し ザガン: ああ、あったわ。ここが……バラームちゃんが眠っている場所ね プルソン: ほりかえす? パイモン: うん。ゆっくり、丁寧にね。バラームを傷つけないように バエル: 微精霊になったあいつはいる? ザガン: ええ、すぐ近くにいるわ ソロモン: なるほど。これで再召喚すればいいわけですか。しかし、こうして魔術書を手に改めて周りに注意を向けてみると……ここはずいぶんと力場が不安定ですね パイモン: 捨てられた島だから、かもしれない 主人公: それじゃあ、肉体と魂をつなぐために……俺のエルマイトを ソロモン: あなたの指先から流れ込んでくる、これが……エルマイト? なるほど、あなたも9人の魔王に負けず劣らず、なかなか興味深い逸材ですね ソロモン: では、始めましょうか パイモン: 儀式どころか魔法陣すら描かないの? ソロモン: 指先でこう、空中に描いているでしょう? 私の召喚は、これで充分なんです バエル: ……っ! くるっ! 630209 - バラームの復活 バエル: あっ……!? バラーム: ……っ? わたくし、いったい…… プルソン: バラームちゃん! やったぁ、バラームちゃん、もどってきたっ! バラーム: プルソンさん!? それに、あなたたち……確かわたくし、武器を手にして……その後、急に意識が…… パイモン: 大丈夫。もう全部、終わったから バラーム: 全部、ですか……? プルソン: バラームちゃんっ! ほんものだっ、あったかいっ 主人公: よかったですね……! これで、やっと揃う…… パイモン: うん。ポチもお疲れ様 ザガン: 大切な人が戻ってくるって……本当に、感動するわね バエル: ……っ パイモン: バエル? バエル: ちがっ……な、なんでもないから…… バラーム: 皆さんが、一度は消滅したわたくしを助けてくださったんですのね バラーム: バエルさん……あの瞬間が最後だと覚悟しておりましたのに、こうして再び顔を合わせると、なんとも言えませんわね バエル: 私だって……もう会えないと思って……っ! バラーム: 泣いてますの? バエル: 泣いてない! バラーム: まあ、泣きたくなる気持ちもわかりますわぁ。わたくしがこうして復活できたのも、あなたの攻撃がへっぽこだったからに他なりませんから~ バエル: は……はあ!? なに言ってくれちゃってんのよ! バラーム: 猫に引っかかれたときのほうが、よっぽど痛かったですわね! バエル: 人が黙って聞いてれば、こんのっ…… ソロモン: なんかケンカが始まりましたけど、大丈夫ですか? 主人公: これが通常運転なんで パイモン: ほんと、飽きもせずよくやるよね 630210 - 召喚術の可能性 ソロモン: なるほど……本当にゴエティアにこんな使い方ができたとは パイモン: もちろん、補完するにも限度があるけど ザガン: 身体が傷ついてるかどうかでいうと、今回のバラームちゃんが限界じゃないかしらね パイモン: あとは微精霊が捕獲されてしまっても無理だし バラーム: ……きわどいところでしたのね。皆さま、大変お手数をおかけしました。改めてお礼申し上げますわ プルソン: ふっかつして、よかったねっ ソロモン: 条件はあるにせよ、なかなか興味深いアイテムであることには変わりありません。私としたことが、これをずっと寝かせておいたなんて バエル: 盗賊のアジトになっちゃってたからね。隠し場所としては、ちゃんと機能してたとは言えるけど ザガン: まさか、あの盗賊たちも、自分たちのアジトにこんなものが置いてあるなんて、思わなかったわよね~ ソロモン: 肉体、精霊、そして強いイマジュマイト……。条件としてはそんなところでしょうか。鍵になるのはあたなのイマジュマイトでしょうね 主人公: まあ、俺の最大の取り柄ってそこだと思うし…… ソロモン: ためしに何かゴエティアで召喚してみましょうか。腕を貸してくだ……あつっ!? プルソン: どしたの。ぽちが引っ掻いた? 主人公: プルソンさん、猫じゃないんですから。でも、本当に何もしてないぞ。どうしたんだ? ソロモン: いえ……何かが急に強い刺激を…… ソロモン: ……っ、これは……? (ソロモンが取り出したのは紐を通して首飾りにしている指輪だった。) (服の中にしまっていたらしい。) (だがその指輪からは、何やら黒っぽい煙のようなものがまとわりついていたのだった――) (次回決着、魔王の命運 召喚王ソロモン) 630211 - 真鍮の指輪 (共に旅した仲間の復活を目指して奔走する魔族の王たち。) (召喚士ソロモンと出会い、ゴエティアの原本を使用することに成功。) (無事にバラームも復活を遂げ、これでようやくすべて解決と思われた。) (だが、ソロモンが付けている指輪から怪しい気配が漂う。) (それは強いディマイトのようだった――) バエル: どうしたの、ポチ。ソロモンの指輪がどうかした? 主人公: 黒い煙が出ているんです。これはディマイトの可能性が…… ザガン: ディマイトって? 主人公: この時代じゃ概念が浸透していない……どう説明すれば……! 主人公: ガープが暴走したときの状況にそっくりなんですよ。バラームさんは、身体に異変はありませんか!? バラーム: え、わたくしですか? いえ、特に変わったところはないようですが……ふふっ、ポチったらわたくしのことがそんなに心配? ザガン: ポチちゃん、落ち着いて。まだ何も起きていないでしょう? プルソン: ぽち? すごくあせってる。ねえ、ザガンちゃん、黒いのでてるのはほんとだよ ソロモン: これが、なんだというんです? 主人公: いますぐ指輪を身体から遠ざけるべきだ! 見てみろ、どんどん黒くなってる! パイモン: ……! 確かに黒い煙のようなものの量が増えてる。ソロモン、ここはポチの言う通りに ソロモン: ……ああ、なるほど。そういうことでしたか 主人公: え? ソロモン: この真鍮の指輪は創造期からずっと私を守ってきてくれたものです。一度、とある悪魔が私を欺いて、この指輪を奪ったことがありました ソロモン: そのとき、私は全てを一度失った……。魔族どもめ、同じ手に乗る私だと思いましたか……!? バラーム: ソロモンさんっ!? 落ち着いてくださいませ!! 630212 - ソロモンの暴走 ソロモン: また私を騙して、今度こそすべてを奪い取ろうって魂胆ですね……? そうはいきませんよ。この黒い煙に怯えて、手放すことが狙いなんでしょう 主人公: ソロモン王……その指輪……と言えば、確かアスモデウスが……? あの逸話が創造期に起きたことになっているのか……! 主人公: となると、信用させるのは至難の業だぞ……! バエル: この黒い煙……いいえ、もう範囲が広がって闇の空間になってる……っ! これはどこから出てきてるの!? プルソン: 地面からわきあがってるかんじ パイモン: まさか、土地から……? ザガン: 土地が何かの呪いを生み出しているってこと~? パイモン: このバイノルドアトラス島は住民たちに捨てられ、海に沈みゆく運命の島。その土地がネガティブなエネルギーを発しているとしたら パイモン: ポチのいうディマイトって、そういうことだよね 主人公: あ、はい、そうです! ネガティブな感情が原因になることが多くて ソロモン: う、うう……この指輪だけは、絶対に渡しません……っ! 絶対に! プルソン: ひゃっ!? ザガン: ぷるちゃん! 大丈夫!? プルソン: うん、かわした。でも、いきなりこーげきしてきたよ ソロモン: う、うあ、うあああああああっ!! 630213 - 魔封じに抗え ソロモン: 絶対に、渡しませんよ……っ! これは、私がっ、築き上げてきた、栄光そのもの……! はああああっ!! バエル: くううううっ!? なんなの、この強さっ バラーム: せっかく復活していただいたのに、ここで潰されるわけにはまいりませんわ! パイモン: 違う……これ、相手が強いんじゃない……。私たちが弱くなってる……!? 主人公: パイモンさんの言う通りです! あの指輪は本来、魔族を従える道具です。皆さんを弱体化させる効果があってもおかしくない! バエル: やたら詳しいね、ポチ。まあいいや、だとしたらどうやって戦う? パイモン: 巨大な怨念……ポチのいうディマイトの器になり得たのがあの指輪なんだ。でも指輪単体では何もできないはず プルソン: やっぱり、指輪とソロモンを離しちゃえばいいんだね 主人公: パイモンさん。突破口は、ソロモンの意識が混濁していることだと思います。ちゃんと考えて行動できているわけじゃない パイモン: そうだね。それにそもそも相手はひとりだ ザガン: ということは、ポチちゃんが考えたフォーメーションで、連携すればいいのかしら~? 主人公: ええ。波状攻撃をしかけましょう! プルソン: わかった! ソロモンちゃんっ、ぷるとあそぼうっ! きゃははははっ! ソロモン: くっ……そんな無謀な突撃、私には……! バエル: まだまだ! 正面だけが攻撃じゃないんだから! バラーム: あら、バエルさんだけに見せ場は渡しませんわよ! ソロモン: 左右同時……っ!? くううっ! パイモン: 両腕で攻撃を弾いた! いくよ、ザガン! ザガン: ふふっ、魔法で遠距離攻撃よ~! ソロモン: くぅうううあああぁぁぁぁっ!! 630214 - 魔王の再集結 ソロモン: ふん……手の内がわかれば、なんということはありません! 同じ手は食わない、それは指輪のことだけを言ったのではない……っ ザガン: ぷるちゃん、気をつけて! 攻撃がくるわ! アスモデウス: そこまでだーっ!! バエル: アスモ!? パイモン: どうやら、メモを見て追いついてくれたみたいだね ベリアル: なんや、おもろそうなことになっとるやないか ベレト: この子がソロモン……ずいぶんやんちゃなのね。ちょっとお仕置きしてあげなくちゃ プルソン: ベレトちゃんだ……! お話では聞いてたけど、本当に復活できたんだねっ…… ベレト: 心配かけちゃったわね。でももう、大丈夫よ アスモデウス: バラームも無事に復活できたみたいだな バラーム: ええ、おかげさまでこの通りですわ。でも…… ソロモン: ああああぁぁあああぁぁっ!! バラーム: くううっ! ゆっくりおしゃべりしている時間は、なさそうですわね……! パイモン: でも、これで9人……魔族の王が全員揃った バエル: ほんと、久々じゃない? 9人全員が揃うなんて バラーム: わたくしたちが揃えば、怖いものなどありませんわ。いきますわよ! 主人公: 皆さん! 敵は小型のディトルパを放出してきます。局面で数的有利を必ず維持しながら戦いましょう 主人公: あとは以前に説明した通り。パイモンさん、戦いながらの修正はまかせます パイモン: わかった バエル: それじゃあみんな! 一気に勝負を決めるよ! 630215 - 夜が明ける場所 ソロモン: う、うう……私は……? ベリアル: ほんま、人騒がせなやっちゃ ザガン: 指輪はこのケースに入れておいたわ。ここ、バイノルドアトラス島から離れてから取り出してね~? ソロモン: そうか、暴走してしまったんですね……。ですが、創造期のことを思えば、疑うのは当然でしょう……! 主人公: ま、まあまあ。ぜんぶ丸くおさまったんだし。アスモ様も、創造期の頃みたいなムチャはしないから プルソン: なんのおはなし? アスモちゃんがどうかしたの? ソロモン: ……いえ、そうですね。いいでしょう、私もこれ以上ここにいてもリスクしかありませんし ソロモン: ただし、人間さん。今度お会いするときは、あなたのことしっかり調べさせてもらいますよ 主人公: はは……お手柔らかに…… (こうして長い、本当に長かった旅はようやく終わりを迎えた。) (俺たちは雪の国にある魔族の集落に戻り、一息つく。) バラーム: ポチ、お茶の用意はまだかしら? ザガン: ポチちゃん、ワインを樽に詰めるからお手伝いしてほしいなぁ~ バエル: ポチーっ! 私のお気に入りのハンカチが見つからない! いますぐ探して! 主人公: は、はい、ただいま! プルソン: たいへんそうだね、ぽち バラーム: わたくしたちの日常ってこんなものだったのではなくて? バエル: まあね。もう忘れかけてたけど ヴィネ: これでようやく……本当に落ち着けるんですね バエル: それで、これからどうする? ベレト: 考えてみたら、あたしたちには戻るべき場所ってないのよね パイモン: この9人での拠点ってこと? ザガン: そうねぇ。みんなの地元はそれぞれあるけど、集まる場所って特に決めてなかったわ プルソン: ぷるたち、獣聖騎兵のことでたいへんで、ずっと旅してたもんね ベリアル: 別にええんちゃう? これまでは緊急事態やったけど、獣聖騎兵もおらんくなったいま、それぞれの所領をきちんとするんが本来の役割やろ? ヴィネ: それは、だめ……拠点は作っておきたいです……! パイモン: どうして? バエル: ……ポチが未来に戻っても、また会いに来れるような目印にしたい……ってことでしょ ヴィネ: ……はい バエル: 私も賛成。それに、せっかくここまで私たちみんなで戦ってきたんだから、象徴的なものがあってもいいと思う バラーム: バエルさんと意見が揃うなんて、ものすっごくレアで、あり得ないことで、天変地異の前触れみたいですけど……でも、わたくしもそう思いますわ 主人公: みんな…… ヴィネ: あ、あの、人間さんが会いに来てくれるなら、ですけど…… 主人公: もちろん。必ず行くよ ザガン: じゃあ、ここからはわたしたちらしい拠点探しをする旅、ってことになるのかしら? ベリアル: ほんで? どんなとこがいいとか考えとるん? バエル: あー、1個だけ希望があって バラーム: なんでしょうね。センスが問われましてよ バエル: 朝日が見える場所がいい、かな (それから、どれくらいの時間が経ったのだろう。) (もっとも俺にとっては、そう長い時間ではなかったのだけど、) (彼女たちにとっては――) プルソン: すっごくすてきな場所なんだよ 主人公: 楽しみです、プルソンさん ザガン: ねえ、ヴィネちゃんったら、ポチちゃんとまた再会していろいろあって……っていうのも、未来視で見てたんですって? バラーム: でもヴィネさんを責めてはいけませんわ。未来なんて、うかつに言えないものですもの バエル: さあ、入って。ここが私たちの拠点だよ 主人公: お邪魔します。みんな……久しぶり、ってことになるのかな アスモデウス: ポチ! 遅いぞ! アスモ様は待ちくたびれた ベリアル: 全然変わっとらんな。って、当たり前か。兄ちゃんからしたら、大して時間経っとらんもんな バエル: ……それだけ未来から来たってことだよね。ほんと、ずいぶん待たされたんだけど バラーム: あーら。バエルさんってば、さびしんぼだったんですわね~。そう言えば毎日、窓の外を見てため息をついていましたわ~! バエル: なっ……それ、そっくりそのまま返すんだけど!? バラームこそ、毎晩ぬいぐるみにポチって呼びかけてなんか話してるくせに バラーム: 何故それを!? パイモン: やれやれ、騒がしいね。でも、帰ってきたって実感するんじゃない? ベレト: そうよ、お邪魔しますなんて言わなくていいの。ここは、あなたの居場所でもあるんだから 主人公: あ……。そうですよね。じゃあ……ただいま ヴィネ: はい、おかえりなさい、人間さん。こうして会える日を、ずっと楽しみにしてました